第96話 吾家竜文 わがいえのりゅうもん

「本気で出来るとでも?」

「出来るわね…おそらく」

「言い切れるのか」

「アナタがいるから」

「僕がなんだというんだ?」

「あなたの父親は、キリスト…そのミイラから採取した精子を受精させた神の子があなたよ亜紀人」

「それがなんの関係がある?古代のハスの花が咲いたのと変わらないレベルだろ?」

「違うわ…奇跡の確率を引き上げる、いえ、奇跡を呼び込む特異点が神の子なのよ」

「この場にキミがいることが、この実験を確実のものとするんだよNo42フォウツゥ

「じゃあ僕が消えれば、バカげた妄想で終わるわけか」

「そうさせないためのナミさんでしょ」

 彩矢子の後ろからナミが顔を出す。

「ユキヤー、怖いよー、なんか嫌だよー」

「彩矢子ー!!」

「色々考えたの、あなたのことも、でも、No80ハチマルが文様の解析を終えた時点で決めたわ、世界はリセットされて、やり直したほうがいい…特異点であるあなたを基準に世界は時を加速させて一度終焉を迎える、そして再びここへ戻るの、今度は規律ある生命体として、あなたはソレを見届けられる観測者なのよ」

「その女を連れて行くといい、新世界のアダムとイブになれるはずだNo42フォウツゥ

「その世界の神は…そこのバカでかいコンピューターで産まれるデジタルゴッドか」

「不滅が訪れない完璧な生命体だ」


「ナミ…こっちにおいで、僕の傍に」

「うん…」

 ナミが亜紀人にしがみつく。

「マリアにするつもりが…イブになったわ」

「彩矢子さま…」

「何も言わないで…」

 サクラの手を握る彩矢子。

「ありがとう、亜紀人に仕えてくれて…」


「時間だ、解析から始めるぞ」

 No80ハチマルの指がEnterキーをタンッと叩いた。


 マザーの駆動音がモニターを振動させて画面にノイズが走る。

「3時間ほどで解析は終わる」

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