第95話 六道輪廻 ろくどうりんね

「マザーが?」

「そうだ、着床が確認された時点で、マザーはNo0ナンバーゼロのデータを取りこみ、自らの演算で生命を創造するのさ、欠点を補って、完璧な遺伝子を記録する、そして電子の世界で、新たな宇宙をも創造する」

「マザーが神にでもなるというのか?」

「宇宙の創造が神の御業ならそう呼ばれて当然だ…僕が造った神」

「馬鹿げている…所詮、演算機の中の出来事にすぎない…」

「バーチャルとリアルに境目なんかないよNo42フォウツゥ、キミだって人為的な生命だろ?たまたま肉体を介しただけだ、それに、No0ナンバーゼロが出産できるのなら、そこにも肉体を持った神の近似値が産まれるかもしれない」

「完璧なステータスを持ったプログラム人格とその近似値の組み合わせか…おぞましいな…」

「うまくいけばだよ、時期に彩矢子もここへ来る、まぁ、腰掛けて見ていくといい、神の誕生の瞬間に立ち会えるかもしれないよ」

「あるいは手品師の失敗を…かもな」

「ハハハハ…かもね」

「ひとつ聞かせてくれ、OOダブルオーと呼んだのはなぜだ?」

「あぁ…No0ナンバーゼロは名前を持たないNOAだ、NoA0ナンバーA100が正式な名称になる」

「NOAなのか?」

「NOAになったのさ…あの肉の塊には…」

「私の細胞が使われているからよ亜紀人」

 扉から彩矢子が入ってきた。

「なに?」

「あの肉の塊は、女だった…そこに卵巣を提供したのは私なの、そのときからNo0ナンバーゼロはNOAへ昇格したのよ、〇が2つになったのでOOダブエウオーと呼ばれることもあるってだけよ」

「卵巣を…」

「そう、だから産まれたらアナタの従弟になるわね、遺伝子上の」


「狂ってる…」

「そう、神は人為的には造れない、すべて近似値に留まる、神話でもそうね、神は完全じゃない、自然発生しないのよ、だから造るの太古から受け継がれてきたARKの目的は絶対神の創造、宇宙の創造、この2つだけ、NOAはそこに情報を運ぶ人間の集まり」

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