第94話 霊魂不滅 れいこんふめつ

「起動だと?」

「うん、起動…なんか変?」

「いや…そういう代物だと思ってなくて」

「あぁそうか、説明しようか?どうせOOダブルオーとマザーの接続に時間が掛かるしね」

 黙って頷く亜紀人。


「あのね、ENMAエンマはねー、太古のインダスにおいて審判を務めていた、そうだな云わば裁判官のようなものだ」

「なんだって?」

「ん、裁判官、違う言い方をすれば法律そのものかな」

「文字じゃないんだよな」

「あぁ違う、文字じゃない、記号の塊だ…コレを見ればキミならピンとくるんじゃないか?」

 No80ハチマルがノートパソコンの画面を見せる。

「これは…そういうことか」

「そう、塩基配列だ人工的に造られ、残された云わばレシピだよ」

「信じられない…」

「そうでもないさ…これこそが、僕らの先輩、いや姉さん、なんだから、僕らが存在していることが事実の裏付けだ」

「確かに…この配列は、僕らの…」

「そう…短命と疾患を克服できないから、彼らはレシピを残したんだ、人類唯一の審判としての役目を追わせるためにね」

「起動とは…どういうことだ?」

OOダブルオー…僕らナンバーズでも、最も悲惨な姿で産まれ…死すら辿り着けない不死の生命、No00ナンバーゼロを素体にして、この塩基配列に書き換える」

No0ナンバーゼロ…」

「そう、肉の塊のような姿、知性も無く、意思も無い、ただの肉の塊…だが生きている、そして死ぬことのない身体と現在、断定されている」

 No80ハチマルが指さすモニターに、液体に浸かったピンクの塊が脈打っている、いくつかの配線が繋がれ、その先に巨大なコンピュータ―がそびえ立つ。

「あれがマザー…僕が造った、現在最高のスパコンだ、ここのオーパーツを組み込んでいるため複製はできない…キミと同じかもね、偶発的に起動したんだ、起動後はマザーと呼んでいるけど、起動前はメタトロンと呼ばれていた、僕が完成させたんだ」

「どういう理屈で転移させるんだ?」

「文様をマザーで現在のDNAに置き換える、変換された遺伝子情報を、書き換え、大量に複製した精子を卵巣を持つNo0ナンバーゼロに受精させる」

「起動じゃないだろ」

「起動するのはマザーのほうだ」

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