第93話 類比推理 るいひすいり

「その周辺には文字が刻まれておりました、そこから推察するに、どうやらこの模様は、その文明に深くかかわっている裁きの証なのだそうで…」

「なんだか釈然としないな…」

「はぁ、私も聞きかじりの知識しかないもので、すいません」

「まぁ…読んでみるよ、寝る前の読書程度に」

「興味があれば、ご案内します」

「この施設内にあるのか…まったく、どういう組織なんだ…ここは」

「知的好奇心の赴くままに…」

「いいよ、解ってる」

「はい」

「従ってみようか」

「えっ?」

「好奇心の赴くままに、だろ?」


 サクラの案内で施設から少し離れたところにある飾りっ気のない建物へ着いた。

「ここです、通称ウェアハウス…世界中から出土した遺物の保管庫です」

「なぜ日本に?」

「それはねー」

 スピーカーから声がする。

「ここ日本が、万が一地図から消えても大きな問題ではないからなんだよ」

「誰だ?」

「ん、僕かい?No80ハチマルと呼ばれているよ」

「ナンバーズ…」

「キミはNo42フォウツゥだろ、隣がサクラ」

「ココ、ウェアハウスはね、外見こそサッパリとして、ただの建物に見えるけど高解像度のカメラや集音機が沢山仕掛けられているハイテクな建物なんだよ、ついでに言えば内部で核爆発が起きても周囲に被害は及ぼさないほどの逆シェルターでもあるんだ」

「なるほど…会話は聴こえていたわけか」

「あぁ、興味があるんだろ、開けるから入ってきなよ」


 すぐに小さな扉が開錠され、シュッと音を立てて開かれる。

 奥へ続く通路は一直線、15畳ほどの部屋に繋がっていた。

 部屋の隅にうずくまるように座る痩せた男。

「やぁ、初めましてNo42フォウツゥ、僕がNo80ハチマルだよ」

 骨ばった手を差し出してくる、握り返した手にジャムがベタリと付いた。

 慌ててハンカチを差し出すサクラ。

 床に直に置かれた皿に食べかけのイチゴジャムとピーナツバターのサンドイッチが乗っている。

ENMAエンマを見に来たんだろ? 今、僕が起動させてみせるから見ていきなよ」

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