第87話 問牛知馬 もんぎゅうちば

「ねぇ、ユキヤ~難しい顔してないで、テキサス飽きてきたよ~牛ばっかだよ~」

「空港ついて、真っ先にテキサスっていったじゃないか」

「だって…ハンバーガー牛だもん、牛はテキサスだもん」

「だから牛ばっかなんじゃ…」

「違うの見たいー」

「ナミさん、船でフロリダに行きますか?ディズニーワールドリゾートがありますよ」

「ディズニーランドじゃないの?」

「もっと大きいです」

「行くー」


 少し怪訝な顔をする亜紀人、それに気づいたサクラが小声で話しかける。

「大丈夫です、No9ナインは死んだのです…当面は問題ありません」

「当面は…ね」

「えぇ…むしろ日本に帰ってからのほうが大変でしょう、こうなってしまっては」

「彩矢子が?」

「いえ、彩矢子さまは、アオイが全てを被りましたから…表向きは何も」

「何が言いたいか解るよサクラ…ナミを施設へ、僕の手元へ置いた方がってことだろ?」

「はい…No9ナインは個人的にナミさんに接触していたようです」

「…そう…職業柄、接触しやすいということか」

「はい…そういう意味でも…ナミさんに話して頂けませんか?」

「うん…それは解っているんだ」


 解っている…うん…解ってはいる。

 ただ、ナミにとって何が幸せなのか、それが解らない。

 僕といることで、ナミを知らず知らずに危険に巻き込んでいる。

 僕と関わらなければ、危険は無いのだ。


 No9ナインがその気になれば…ナミをどうとでもできたはず、それを考えると、自分が身を引けばいいだけなのではと思ってしまう。


「ユキヤ~、船楽しいね…でも、ちょっと気持ち悪いかも」

「食べすぎだよ」

「胃腸薬飲んだもん」

「そんなもの飲んでまで食べなくても」

「だって、もう2度と来れないかもしれないじゃん」

「また…来たければ連れてくるさ」

「ホント?お店許してくれるかな~」


 ナミは僕の事をどう思っているのだろう。

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