第86話 明哲保身 めいてつほしん

「アオイが死にました…」

「えっ?」

 サクラから事の経緯を聞いた亜紀人。

 No5フィフスNo9ナインのことも同時に知った。

 テキサスで自分の顔より大きいステーキをカミカミと噛んでいるナミを独り奥のテーブルへ残して、カウンターで話している亜紀人とサクラ。

No5フィフスNo9ナインか…ナンバーズが日本へ来るのはmやはり僕なのか?」

「そうです。皆、一応に役目は追っています、亜紀人さまを利用する者、懐柔したいでしょうね」

「彩矢子も…か」

「彩矢子さまは、少し違います」

「似たようなもんだろ…」

 グレープフルーツジュースを全部飲み干し、ナミのテーブルへ戻る亜紀人。

「ユキヤ~、ほらっ」

 大きな肉の塊を不器用にナイフとフォークで左右から突き刺して持ち上げてみせるナミ。

「ナミの顔より大きいね」

「うん、こうすると見えない?」

 自分の顔の前にステーキを持ち上げて顔を隠す。

「うん、見えない」

「アタシもユキヤが見えないよー」


 亜紀人は彩矢子の真意を測りかねていた、なぜ僕を非難させた?

 彩矢子自身の研究に、僕はタッチしていない。

 僕が何をしていようと口出しはしなかった…だがサクラの話からするとNo9ナインの話には乗らなかった。

 何をしようとしたのだろう、No9ナインというナンバーズは…。

 それもNOAを名乗った、その日にNo5フィフスに殺される、それにアオイ深く関与した。


 自分の知らないところで、一夜に3人も死んでいた。

 結果、自分の安全が確保されたのだが、なぜナミも強引に巻き込んだ?

 No9ナインはナミを使って何かしようとしたのか…あるいは、彩矢子が…。

 彩矢子はナミに固執している。

 それは薄々感づいている。

 自然発生する僕のDNA、つまりは近似値に興味を持っているから、僕のクローンは造れない、全てが近似値か量産型に終わるだろう…でも自然発生的にDNAを受け継いだ場合は?


 それが彩矢子の興味、そのためのナミ。

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