第85話 夢幻泡沫 むげんほうまつ

「それで満足ですか?No5フィフス…」

 部屋の隅からアオイが現れた。

「あぁ…コイツは昔から嫌いだったんだ…最後に、この手で殺れてよかった」

「本当に?」

「ウソは言わない、この期に及んでな…」

「そうですか」

「感謝してる、だから気に病むな、アオイ」

「俺がNo23ツゥスリーが最後に打った薬の投与を望んだんだ…おかげで、ひと息で殺せた」

「その薬は…」

「知っている、死と引き変えの力なんだろう、いいんだ…俺はもう代謝の限界を超えている、緩やかな死を待つだけの身体だった…だからいい、最後に感情に従って行動することの快感を感じているよ」


 無言で頭を下げて、部屋を出るアオイ。

「アオイ」

 扉を閉めようとしたアオイをNo5フィフスが呼び止める。

「最後に、コイツと一緒に処理してくれ…頼む…あの世でもコイツを抑えておけるのは俺だけだ」

 ニコッと笑うNo5フィフス

「はい、承知しました」

「ありがとう…コレを飲めば楽に逝けるんだろ?」

 頷くアオイ。

「後処理ばかりで迷惑かけるな…スマン」

 アオイはNo5フィフスに微笑んで、扉を閉めた。


 4時間後、No5フィフスNo9ナインの処分が行われ、アオイは独断で動いたとして、その2時間後、処理された。


 チャーター機は、羽田からアメリカへ向かっていた。

「本場のハンバーガー食べに行こうよー」

 ナミのこの一言で行先は決まった。

 奇しくも、アメリカでは…

No80ハチマルが部屋を出ただと?」

 自室に自作のコンピューターを持ち込み、普段1歩も外には出ないNo80ハチマルが自室を出て日本へ向かう準備をしていた。

「日本にあるENMAエンマ今度は起動させてみせる、そのためにはやっぱり直接行かないとダメだね、マザーと一緒に」

 白人の細身の男…歳の割に言葉遣いは幼く、常に爪を噛んでいる。


 空ですれ違ったNo42フォウツゥNo80ハチマル、顔を合わせるのは2週間後…。

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