第84話 妙計奇策 みょうけいきさく

「彩矢子…余計なことを…」

 No9ナインは計略を練っていた。

 No42フォウツゥを意中のままに操るには、ナミを人質にするのが一番確実で手っ取り早い。

 わざわざ、下見までしたのだ、あの場でさらってしまえば良かった。

 今になってはそう思う。

 遊びが過ぎて、後手に回ってしまった。

 No9ナインの誤算、それは彩矢子がNOAでの立場を悪くしてまで、No42フォウツゥを庇うとは思わなかったこと。

(血の繋がりってやつか…それとも母性か?)

 自嘲気味にフハハと笑い、どこかに電話を掛ける。

「俺だ…No80ハチマルに繋いでくれ……あぁ、No9ナイン、いや元No9ナインだ、すまないが、日本発のチャーター機を教えてくれ…陸海空、全てだ…全部で8機?…解った…いや…オマエ、日本に来ないか?」


 スマホを胸ポケットに収めて、地下へ向かう。

(No80ハチマルに、日本のメインコンピュータをハッキングさせるか…外部からはセキュリティを破る前にプロテクトされるからな…内部からならあるいは…)


「にしても8機とはね…1晩でよくも手配したものだ、サクラか…優秀じゃないか」


 サクラは、可能な限りチャーター機を手配していた。

 飛行機に限らず、車・船もだ。

 どれに乗っているか解らなくするための時間稼ぎ。

 日本に子飼いの部下のいないNo9ナインには有効な手段だ。


 エレベーターを降りたNo9ナインが向かった先、繋がれたNo5フィフスがいた。

「おはよう、よく眠れたかい?No5フィフス

「………」

「大分、弱っているようだ…もはや汗すらかいていないじゃないか?脱水か?」

「……か…が…」

「なんだ?聞き取れないよ」

 No9ナインが不用意にNo5フィフスに近づいて顔を近づける。

「バカが!! と言ったんだ!!」

 No5フィフスの腕がNo9ナインの頭を抑えつける。

「なに?」

 顔からサッと血の気が引くNo9ナイン

「死ね…下衆野郎…」

 No5フィフスが渾身の力を込めてNo9ナインの頭を床に叩きつける。

 メシャッ…潰れたような音がして、ビクッと波打ったNo9ナインの身体が床に横たわる。


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