第81話 碧落一洗 へきらくいっせん

「今度はさー、アタシの行きたい所へ連れてくって言ったよね~」

 車で飛行場へ向かう道中、ナミが亜紀人に文句を言う。

「僕もサクラが急にこんなこと言いだして、驚いているんだ」

 運転席のサクラには聞こえていないが、不信感が渦巻いている。

「ホントに手ぶらで来ちゃったよー」

「僕もだよ、急に追い出す様に連れ出されたんだ…」

(なにかあったな…なにがあったんだARKか…彩矢子か…)

 亜紀人は、頭の片隅でそのことだけを考えていた。

「ねぇー、ユキヤ、ハンバーガー食べようよー、どこかコンビニ寄ろうよー」

「空港まで停まらないみたいだ…」

「えー、飛行機ハンバーガーあるの?」

「空港にはあるさ」

「マック?」

「あぁ…」

「モスがいい…」

「機内でも食べれるさ」

「ホント?、機内食ハンバーガー?、フィッシュ・オア・ビーフでビーフって言うよ」

「あぁ…」


(僕だけならともかく、ナミも一緒とは…彼女にも何か関係があるのだろうか…彩矢子ならば、こんなことはさせないだろう…ARKか…なにか…彩矢子が緊急処置をしなければならないことが起こったんだ)


「…ユキヤ…ねぇユキヤってば」

 考え事をしていて、ナミの話をまともに聞いていなかった亜紀人

「ん?ハンバーガーだろ大丈夫だよ」

「違うよー、替えの、ぱんちゅとかも持ってないよー、空港でもホテルでも買えるよ…僕もないし」

「ホント?ユキヤも無いの?アハハハハ」


(大丈夫だ…サクラもいるし、僕もいる…ナミは守れる)

 少し忘れていた戦場へ赴くような緊張感を感じていた。

 あのヒリヒリするような空気。

 違うのは、生き残るだけじゃダメだという責任感も感じていること。

 僕独りが生き残ればいいというわけじゃない。


「で?No42フォウツゥ、いや野田 亜紀人は何処だ?彩矢子」

「休暇を取っているわ…今日からね」

「……逃がしたな……彩矢子」

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