第80話 富貴浮雲 ふうきふうん
「亜紀人さま、ナミさんとのことですが…」
「ん?」
「彩矢子さまの提案で、旅行などいかがかでしょうかと提案されたのですが」
「旅行?いや…いいよ、ナミの都合もあるし、僕も、研究に興味が湧いてきたとこなんだ」
「だからこそです、一度、着手の前に頭をリセットされてはというアドバイスです」
「どういうこと?」
「結論を決めつけると、それ以上のものはできないということかと思います」
「ふ~ん、証明だけではダメということ…可能性の示唆…」
しばらく考えていた亜紀人、サクラの顔をじぃーっと見ている。
「わかった…ナミに聞いてみる」
「あぁ、連絡なら私が」
亜紀人の返事を待たずに、サクラは軽く会釈して研究室を出て行った。
サクラはナミの務めるデリヘルの事務所に電話して、無理を言って2週間の予約を取り付けた。
もちろん簡単ではない。
800万…ナミを2週間拘束するのに使った。
パスポートの申請は、ARKの権限を使って6時間で済ませた。
飛行機はARKのチャーター機、行きたい所へ行けるようにスケジュールは組まない。
自由な旅行の準備は、皮肉にも桁違いの労力と出費を必要とし、サクラを24時間拘束した。
ナミは正直、旅行を渋っていた。
「え~、なんか嫌だよー」
「いいじゃん、売上800万だぜ、オマエの取り分650万だよ、いい話じゃん」
「そうだけど…2週間も旅行とかしたことないしー、海外行ったことないしー」
「大丈夫だって、全部、相手持ち、手ぶらでも構わないってさ」
「なにソレ?そんな海外旅行聞いたことないよー」
(ユキヤどうしたんだろ?急に…)
驚いているのは亜紀人も同じだ、出発は明日、手ぶらでいいから飛行機に乗れと言うサクラの行動に不信感しかない。
「なんなんだよ、ソレ」
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