第79話 百年大計 ひゃくねん のたいけい
(この男と話していると、なぜこうもイライラとして、心がザワつくのか…)
彩矢子はそんなことを考えていた。
考えるまでも無い。
この男は、自身の保身をまったく考えてない。
その口から出るのは、どうやったら他人が嫌がるか、困るか、それでいて断れない決断を迫り、選び用のない選択を突きつける。
あるいは資質だったのかもしれない。
劣等感が育んだ性質かもしれない。
過程はともかく、結果
(この男がNOA…自分と同格になる?)
口だけで何も出来ない男。
NOAとはエースプレイヤーでなくてはならない、自分はそう思ってきた。
その才を持って、結果を出せる者の集団でなければならない。
自分もそうだし、亜紀人もそうなる。
そのNOAに、口だけで飼われている男が名を連ねる。
彩矢子のプライドはソレを許さなかった。
無言で会議室を出たまま研究室へは行かずに自室で、ワインを瓶のまま口を付けてグビグビと飲み干した。
そのほとんどは、唇から零れ白衣を薄い赤色に染める。
(
投げつけたワインの瓶が、残った中身を飛び散らせながら壁にゴンッと音を立てて床に転がる。
呼吸を整えて、サクラに連絡をとる。
「サクラ…亜紀人に、しばらく休暇を与えて、ナミさんと旅行にでも行かせて頂戴、もちろんアナタも付いていくのよ、2週間ほど施設には戻らせないで、頼んだわよ」
今は遠ざけること…それしかできない。
その間に、なんとかしなければ、亜紀人すら
あの男には、他人に対する区別も差別も無い。
あるのは興味だけ。
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