第77話 能事畢矣 のうじおわれり

「ちょっと…休憩をいいか?」

 No5フィフスが席を立つ。

「どうした?あっ…時間か」

「知ってるくせに…オマエが遅刻したせいだろ…」

 少し、ふらつきながらNo5フィフスが部屋を出る。

「厄介な身体ね~」

「治癒力は抜群だけど、消耗が激しすぎる…どんなに身体を弄り回しても克服できなかったようだ」

「弄り回しすぎたから…ってことないかしら?」

「さぁね、でも、あれだけの人体実験に耐えられる体はナンバーズならではだよ」

「そうね~、弄り回さなければ優れた人間で障害を終えたかもね~」

「それはないね…僕達の寿命は短い」

「可哀想ね~亜紀人はどうなんだろ?」

「彼は、大丈夫だろ…そのためにNo5フィフスの治験結果は渡したんだ、有効に使ってほしいね彩矢子」


「待たせた…少し具合が良くない…が」

「大丈夫?休む?」

「いや大丈夫だ…」

 No5フィフスの表情が優れない。

「続けるとしよう、第2世代の創造に着手する前に、明確にしておきたいんだ、目的と手段を」

「ちょっとそれは、ARKの理念に反するわ」

「目的と手段が?」

「それを強制されない好奇心で動けるのがARKの理念でNOAの特権でしょ?亜紀人に、あなたの考えを強要することはできないわ」

「ふん…強要?違うね、教導だ、導くんだよ彩矢子」

「無理ね、あの子はアレで頑固なの…ナンバーズと接触させたことを後悔もしている…悪影響だったわ」

「俺はまだ会っていない…」

「会わせる気はないわ」

「過保護だな…叔母様は」

「机上の空論じゃ捗らないだろう?」

「はっ?」

「勘は鈍いんだな彩矢子…俺は、そのためのお膳立てをしてやってるんだが」

 彩矢子が無言でNo5フィフスを見る。

「気づいたか…もう鈍いんだからな」

 からかう様に話し、チラッとNo5フィフスを小馬鹿にした目で見る。


「まさか…」

 No5フィフスの表情に焦りが浮かぶ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る