第76話 佞悪醜穢 ねいあくしゅうわい

「あぁ…そうだね」

 No9ナインがチラッと視線を彩矢子へ移す。

「マリアは現時点ではキミの姉さんだ」

 NOAに本名なんて意味は無い、ここではN・O・Aを冠する名を与えられる。

「そうね…そうなるわ、それが不満?」

「いや別に…」

「何が言いたいんだ、オマエの話は回りくどい」

 No5フィフスがイライラしている、机を小刻みに指でコンコンコンと叩いている。

「まぁ聞けよ…オマエでも理解できるように話しているから回りくどくなるんだからさ」

「なに!!」

「いいかげんにしてちょうだい…」

 彩矢子の目つきが変わる。

「ふん…話を続けるぞ、キリストを産んだ母体の呼称がマリアなんだ、つまりマリア在りきではない」

「ただの呼称にすぎない?」

「そうさ、No68シクスエイトは、ソコをはき違えて第2世代を創ろうとした」

「だから消したと」

「まぁ、消えたのは事故だ…」

「よく言うな…」

「フフ…第2世代はNo42フォウツゥのコピーではないんだ」

「どう造り替えたいの?」

「考えてみろ、No42フォウツゥはすでにキリストのDNAを捕り込んだ素体なんだ、神の子に最も近いレプリカだ」

「どんなにNo42フォウツゥに近づけても神の創造には届かない」

「神の創造?」

 No5フィフスが眉をしかめる。

「そうだ、我々の目的は、人類の選別と管理、そのためには統一的な象徴ともいえる神が必要なんだよ」

「それなら亜紀人、No42フォウツゥが着手してるわ」

「違うな、No42フォウツゥが考えているのは、第2世代、自分に届かない劣化版を集めて民主的な手法での管理だ、それじゃ精度の高い法律が支配する世界、それじゃ管理とは言わない、管理とは支配だ」

「乱暴ね」

「でもNOAは、支配という管理を望んでいるのだろ?少数の人間による意思を押し付ける世界…」

「フフフフ…本当に乱暴ね…」

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