第75話 盗人上戸 ぬすびとじょうご

 時間に少し遅れて、No9ナインが会議室に顔を出した。

「おはよう彩矢子…久しぶりだNo5フィフス

「今日も遅刻かNo9ナイン

「ん?怒ってるのかNo5フィフス?」

「当たり前だ!! 昨夜は待ちぼうけだしな!!」

「そりゃ悪かった、いや黒人は顔色が解らなくてね…怒っても赤くならないからさ、表情が読みにくいんだスマン、スマン」

「貴様!!」

 椅子から立ち上がるNo5フィフス、背が高く、スーツの上からでも、そのしなやかな肉体を感じさせるアフリカ系の黒人。

 手足が長くスタイルはもちろん、顔もモデルのように整っている。

 No9ナインとは対照的だ。

「止めなさいNo5フィフス…軽口くらい聞き流しなさい、大人げない」

 無言で椅子に掛け直すNo5フィフス

「さて、No9ナイン、あなたの言うとおりにしたのよ、私はNo68シクスエイトを犠牲にしたわ、あなたの説明をしっかりと聞きたいわね、と…No5フィフスまで呼んだ理由もね」

「あぁ、解っている」

No42フォウツゥが見つかったことはラッキーだった、その件だろ?」

 No5フィフスが口を挟む。

「もちろんだ、我々ナンバーズ唯一無二の完全体、No42フォウツゥ、キリストのDNAを引き継いで、何も損傷を起こさなかった個体は、俺と彼だけだ」

「笑わせるな、お前は引き継いだかすら怪しいんじゃないか」

「引き継いではいるさ、ただあまりに血統が薄いってだけでね」

「外見と違って、中身は普通すぎるほど普通なんだもんな」

 バカにしたように笑うNo5フィフス

「そうだな、俺は高タンパクを数時間単位で打ち続けなければ歩くこともままならないなんて疾患は発症していないからな」

「おかげで、治癒力は抜群なのよね~No5フィフスは」

No23ツゥスリーのデータをベースに老化抑止のモルモットをしていたオマエの副産物は、せいぜいシワ取りクリームには活かされるさ」

「貴様!!」

「事実だ、商品化間近だよ、ありがとうNo5フィフス、化粧品部門が潤うよ多分ね」

「話を進めて頂戴、No9ナイン

 イラついた彩矢子が机をバンッと叩いた。

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