第69話 痴心妄想 ちしんもうそう

 僕のDNAとNo23ツゥスリーNo68シクスエイトのDNAに大きな差は無い。

 同じ父親から産まれていることも確かだ。

 ではこの父親のDNAをどうやって調べるか?

 僕がアクセスできるデータベースには近似値すら存在しない。

 ということは、産まれてから一度たりとも病院に行ったことが無い高齢者、あるいは意図的に、このデータベースを改ざんできる人間。

 つまりNOA、その上…。

 限りなく、その存在を『無』にできるほどの権力を持っている人間。


 どうも腑に落ちない。

 単純にスペックが優れているというだけで、デザイナーズベイビーのトライアルなど行うだろうか?

 僕の誕生は偶発的な奇跡だと彩矢子から聞かされている。

 意図して産まれた者ではないと。

 だから特別なのだとも。


 僕の、いや、僕たちの父親は現存している人間ではない。

 そう考えるべきだ。

 歴史上の誰か、復元してみたくなる誰か、そう考えるのが自然だ。

 誰を…というより、そんな人物のDNAが残っているのか?

 自然受精させたのだから、精液が採取できるということだ、そんな人物。

 矛盾している。

 在り得ない…僕は誰に似せて造られたんだ?


 No68シクスエイトは知っていた。

 知らされていたから、第2世代を考えたんだ。

 知ったわけではないはずだ、必要があって知らされた。

 何かを諦めていた彼女の、あの表情が脳裏を過る。


 ニワトリが先か…タマゴが先か…。


 考えたくはないが、僕が行き着いた答えは、最初から変わらない。

 打ち消したかったから調べた。

 答えは…僕の父親は。


『神』


 神は自らに似せて人を創った。

 その人が、今度は神を創ろうとしている。


 僕の父親…歴史上『神』を確認できたことはない。

 だが…神の子はいた。

『キリスト』


 キリストを復元し、キリストの手で神を創りだす。


 神の子無くして御父はない。

 つまり、キリストを産んだ母の連れが神となるのだ。


 ニワトリが先か…タマゴが先か…の問いの答えはココに在る。


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