第69話 痴心妄想 ちしんもうそう
僕のDNAと
同じ父親から産まれていることも確かだ。
ではこの父親のDNAをどうやって調べるか?
僕がアクセスできるデータベースには近似値すら存在しない。
ということは、産まれてから一度たりとも病院に行ったことが無い高齢者、あるいは意図的に、このデータベースを改ざんできる人間。
つまりNOA、その上…。
限りなく、その存在を『無』にできるほどの権力を持っている人間。
どうも腑に落ちない。
単純にスペックが優れているというだけで、デザイナーズベイビーのトライアルなど行うだろうか?
僕の誕生は偶発的な奇跡だと彩矢子から聞かされている。
意図して産まれた者ではないと。
だから特別なのだとも。
僕の、いや、僕たちの父親は現存している人間ではない。
そう考えるべきだ。
歴史上の誰か、復元してみたくなる誰か、そう考えるのが自然だ。
誰を…というより、そんな人物のDNAが残っているのか?
自然受精させたのだから、精液が採取できるということだ、そんな人物。
矛盾している。
在り得ない…僕は誰に似せて造られたんだ?
知らされていたから、第2世代を考えたんだ。
知ったわけではないはずだ、必要があって知らされた。
何かを諦めていた彼女の、あの表情が脳裏を過る。
ニワトリが先か…タマゴが先か…。
考えたくはないが、僕が行き着いた答えは、最初から変わらない。
打ち消したかったから調べた。
答えは…僕の父親は。
『神』
神は自らに似せて人を創った。
その人が、今度は神を創ろうとしている。
僕の父親…歴史上『神』を確認できたことはない。
だが…神の子はいた。
『キリスト』
キリストを復元し、キリストの手で神を創りだす。
神の子無くして御父はない。
つまり、キリストを産んだ母の連れが神となるのだ。
ニワトリが先か…タマゴが先か…の問いの答えはココに在る。
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