第59話 鬼哭啾啾 きこくしゅうしゅう
僕は、自室で
不死にどれだけ近づけるのか、肉体の限界は、主にこの2点のデータ収集のために生きた彼の気持ちは理解できないだろう。
ただ、その思いを自身の自滅を加速させてまで、僕にぶつけてきた行き場の無い感情だけは少し理解できる。
知ってほしかった。
同じ境遇で産まれ、偶発的に疾患の無い僕に。
不思議と彼に殴られ、蹴られた感触だけは残っている。
嫌なものに触れた感触が指先に、いつまでも残るような不快感。
ただ、そこから感じるのは悲しみと怒りだという点だ。
まるで呪いの刻印を押されたような感触。
内出血して紫に変色した身体のアチコチから、怨念が込み上げてるようで、僕は自分の身体を強く両手で抱いた。
こうしていないと、その怨念が溢れだしそうで…。
一時の肉体強化を促す試験薬の投与、彼は自ら望んで治験者となったのだろう。
日々老いていく肉体を一時、飛躍的に向上させる、その代償は、一般人のそれと比べ反動も大きい
命を搾りだして僕の身体に残したアザが呪いでなくてなんなんだ。
(怖かったよ…産まれて初めて…他人が怖いと思った)
僕は今日、初めて『ヒトの恐怖』を知った。
同時に故人に思いを馳せることも…。
悲しいとは思わない、ツライとも、ただ何か喪失感のようなものを感じる。
失う怖さを今日、僕は知った。
それは、
ナミのこと。
ナミを失うことを考えてしまった。
その想像だけで、僕の心はギュッと締め付けられるような微かな痛みを感じた。
心が痛いなんて、ただの比喩かと思っていたが、そうではないらしい。
怖いから逃げたいとも思った。
その答えが僕には解らない。
何処へ逃げればいいのか?
逃げてどうなるのか?
何をどう考えても、僕の頭にはナミのことしか浮かばない。
ナミと逃げたい?
ナミから逃げたい?
違う…ナミに逢いたい。
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