第60話 薫陶成性 くんとうせいせい

 明け方まで、彩矢子と交わっていた。

 一夜で幾度、死んでもいいと思っただろう。

 彩矢子に必要とされている、それを実感しながら死ねるなら、それでいい…。

 それがたとえ、性的欲求の捌け口であったとしても、その相手に自分を選んでくれたのならそれでいい。


 自分の研究を亜紀人、No42フォウツゥに譲渡、それは耐えがたい屈辱。

 だけど、彩矢子は、私を必要としてくれている。

 No42フォウツゥには出来ないことで…こうして私の口で…舌で…指で、全身で彩矢子を愛している。


 明け方、シャワーを浴びてショーツを穿いている彩矢子を眺めていたNo68シクスエイト

 普通のショーツは身に付けることができない自分にとって、彩矢子の下着姿は憧れでもある。

「ねぇ…彩矢子、しばらく、そのままでいてくれない?」

「ん?どうして…」

 白いレースのショーツを身に付けただけの彩矢子がベッドに横たわるNo68シクスエイトの足元へ腰かける。

「キレイだから…」

「フフフ…あなたも穿いてみたら、きっとキレイよ」

 普通のショーツは無理でも、サイドが紐だけのショーツや秘部だけを覆い隠すタイプの下着なら身に付けられる。

 でも、No68シクスエイトは、そういうものを拒んでいた。

 からかわれるのも嫌だったが、下着姿の彩矢子は、No68シクスエイトにとって特別なものだったから、自分の足はヒレのようで、彩矢子のような細く長い脚とは、あまりにもかけ離れている。

 だから足はロングスカートで隠し、ショーツの類は身に付けずにいた。

 それは真似すればするほど、懸け離れていく姿を嫌悪してしまいそうだったから。


「彩矢子…彩矢子のショーツを頂戴」

「えっ?変な子ね、なんで?」

「なんでも…誰も持っていない彩矢子のナニカが欲しいの」


 彩矢子はNo68シクスエイトの頭にキスして、黙って立ちあがった。

 真っ白の光沢あるクローゼットから、何枚かのショーツをNo68シクスエイトへ渡す。

 そのうちの1枚、サイドを紐で結ぶショーツをNo68に穿かせた。

「キレイよ…とても」

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