第3章 血統で決まる未来

第53話 哀鴻遍野 あいこうへんや

 知らないの?

 言葉よりも、その表情が全てを物語っていた。

(なにも聞かされていないの?NOAのくせに)

 そう言いたげな表情。


 ナンバーズは、僕の下位互換。

 それがこの施設、いや組織の認識、ナンバーズの価値は僕が存在する限り無いに等しい。

 No23ツゥスリーもだから僕が憎くて…。

 存在の証が欲しくて、きっと…。


「なに考えてるの?」

 何を考えているのか推察できているといった顔のNo68シクスエイト、その表情が妙に癇に障る。

「お前には関係ないことだ」

「関係ない…ことは無いでしょ」

 いちいち癇に障る、こちらの出方を伺うような会話運びが僕を苛立たせる。

 No23ツゥスリーとはまた違う嫌悪感を抱く。

「同族嫌悪ね」

「そうなんだろうな、僕たちはきっと」

「アナタは私たちを見て、嫌悪と恐怖を抱く、私たちはアナタを見て自らの存在を無価値だと知る」

「相容れるわけはない…か」


 束の間の無言。

「僕は、誰から産まれた?」

「ん?」

「知っているな」

「もちろん」

「教えろ!!」

 僕は車いすに座るNo68シクスエイトの肩を掴んだ。

「痛いわ…それに自分で探しなさい、難しいことじゃないはずよ、それがアナタの存在価値なんだから」

「存在…価値?」

「アナタはソレを創造するために造られたんだから」

「オマエだってそうだろうに!!」

 僕は掴んだままのNo68シクスエイトの肩を強く幾度か揺さぶった。

「だから、痛い!!」

 キッと睨むNo68シクスエイトと、しばし睨みあい、僕は彼女の肩から手を放した。

「すまない…」

「ニワトリが先か、タマゴが先か、その答えに意味は無いの…だから…」

「だから?」

「自分で決めなさい、私たちを踏み台にして、その先は自分で決めなさい」

「なにも教えてはくれないんだな…誰も…オマエも」

「アナタにモノを教えられる人なんていないのよ…誰も…ワタシも」

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