第51話 Yesterday Yarn 過去に繋がる糸

 No23ツゥスリーの遺体は僕が処分した。

 研究施設にある処分場には、この手の処理も多いのだろう、デカい電子レンジのような箱がある。

 人間を1時間程度入れておくと灰になるという便利な高性能な電子レンジだ。

 その通称も『レンジ』

 知的好奇心だけで動いているだけあって、造る物も倫理観を外れている。

 全面強化ガラス、電磁波を遮断し外部から観察できるようになっている。

 それも360°部屋の真ん中に支柱で支えられている3mほどの立方体。

 この施設の連中は、どこか狂っている。

 人が灰になる様を観察するために造ったのだ。

 動機は『効率よく死体を処分するには?』

 そんなところだろう、中学生が妄想しそうなことを実現してみた。

 頭がいいだけで、精神的には幼いのだろうと思う。

 それを使う僕はどうなんだ?

 No23ツゥスリーの遺体をレンジの中央に置く。

 扉を閉めて、スイッチを押す。

 血液や体液が沸騰して皮膚の内部からボコッ…ボコッと小さな破裂が起こり、皮膚が焼けていく、赤黒く変色した身体が燃えていく。

 その様をじっとレンジの横に座って見ていた。

(コイツは僕…)

 思わずカッとなって口をついて出た言葉。

 灰になったNo23ツゥスリーを掃除人が引き取りに来た。

 まだ温かい灰を手に取ってギュッと握って拳の中に刷り込むように指を動かす。

(なんのために産まれたんだろう、僕は)

 死ぬために産まれる?

 それは誰しもそうなんだ。

 じゃあなんのために生きる?

 何かを成すために生きれるのなら幸せなのだろうか?

 僕は何を成す?

 NOAとして何を成すために存在するんだろう。


(違うよな、No23ツゥスリー…何かを成すためじゃない、僕達が産まれたのはきっと違うよな)


 僕の中でナニカが芽生えたように感じた。


 彩矢子の脇で車椅子に座るブロンドの女性がモニターを眺める。

「アレがNo42フォウツゥ?」

「そうよ」

「結構、普通なのね」

「気に入らないのNo68シクスエイト

「別に…」

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