第46話 Trash Trim ゴミ掃除

 No23ツゥスリーの僕に対する憎悪は逆恨みとも思える。

 実際に互いに何をした、されたわけでもない。

 しかし、これほどに嫌悪している彼が僕を…僕が彼を…。

 他のデザイナーズベビーもそうなのだろうか、相容れぬ存在なのだろうか。

 他に5人、いずれ逢うのか…合うのか?…遭うのだろうか。


 眠る気にもならない、そんな夜がある。

 それは昔から、眠れないわけでもなく、ただ眠ることを拒む夜が…。


 No23ツゥスリーの身体、僕の仮説…それが正しければ…あるいは…。

「同族嫌悪か…」

 口に出して呟くと嫌な言葉だと思う。

 似ているもの同士はいがみ合う。

 似すぎているんだ…製造工程が同じなのだから、No23ツゥスリーは不良品ではない。

 むしろ完成品なのだ。

 僕というイレギュラーがいなければ…。

「不良品といえば…それは僕のほうだ…」

 アウト・オブ・スタンダート。

 僕は標準モデルではない、だから手が掛かるのは仕方ない。

 僕の気まぐれなど彩矢子にしてみればそんな程度のこと。


 僕は精度の高いパーツであり、今後、量産が見込まれる雛形に過ぎない。

 ただ、今、現在変わりが無いだけ、その量産すら雛形である僕に造らせようとしている。

 No23ツゥスリーの件だって知っているはずだ。

 何も言ってこないのは、僕が勝つと、あるいは死にはしないと知っているから。

 それは、僕の仮説が正しいという根拠に繋がっている。

 そう…No23ツゥスリーは単体では僕より遥かに強い、でも僕には絶対に勝てない。

 彼に勝つには、勝とうとしなければいいだけ。


 それが解っているから、彩矢子は何も言わない。

 僕にナミという存在がいる以上、僕が死を選ぶわけがないと解っている。


 すべて知っているから…僕を、今まで泳がせていたのだから。

 彩矢子は確信している。

 ナミの存在が僕を手なずける唯一の手段だということを…。

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