第42話 Prawn Prodigious デカい海老

 ナミの手から口紅を受け取ったサクラ

「ありがとう…使わせてもらうわ」

 ニコッと笑って窓を閉め、ホテルを後にした。


「仲よくなれたかな~サクラと」

「あぁ…サクラが笑ったのは初めて見たよ」

「ホント~?ユキヤ嫌われてたんじゃない?」

「ハハッ…そうかもね」

「冗談だよ…」


 スィートに入ると、食事の時間を聞かれた。

 3時間後に全て部屋に運んで貰えるよう頼んで、僕たちは広いソファに腰かける。

「コレ持ってきた~」

 大きな鞄からDVDを2枚取り出すナミ。

 1枚は恋愛映画、もう一枚はアニメだ。

「コレ観た?」

「いや…映画とか観ないから…」

「えっ?そうなの~変なの~」

 DVDを再生して、映画を観ていると非現実的な内容に驚かされる。

 それ以上に驚くのは、ナミがチョイチョイ巻き戻すことだ。

「ん?なんか意味解らなくなったよ…」

「いつ?いつ言った?言ってたそんなこと?」

 呟きながら、巻き戻す。

 結局、大雑把にしか頭に残らなかった。

「でもさ…幸せだよね」

 ナミにとっては途中はどうあれ、最後がハッピーエンドであれば、それで満足なのだろう。

 お菓子を食べながら足をパタパタさせて映画を観ている。

 僕は、映画よりナミを見ている時間の方が長かったかもしれない。

(不思議な娘だ…)

 ノックされ、ドアを開けると食事が運ばれてくる。

 テーブルがセッティングされて、食事がテーブルを埋める。

 適当な間を開けて次々と運ばれる料理。

 1か月前まで固形栄養食メインで生活していたのに…随分と環境が変わったものだ。

 戸籍すら持たない、この僕が…。


「美味しい?」

「ふ~ん…あんまり食べたことないから解らないけど、なんか納豆とか食べたい気になるよ」

「納豆?」

「うん、カニカマとか」

「カニか…エビだねコレ」

「うん、デカくて気持ちわる~い」

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