第40話 Noticeable Naturally ただ自然に

 亜紀人がレジで精算を済ませるとナミが買い物袋を持って走ってきた。

 サクラが車から降りると

「ハイ、これ…お昼食べた?、これ美味しいんだよ~」

 とハンバーガーを差し出した。

「いえ…私は…」

「いいから食べなよ~、さっきのお店の料理、食べた気しなかったから…天ぷら蕎麦食べたの、美味しかった、だから、あなたにもお蕎麦を買ってきた」

 もうひとつの袋からざる蕎麦を取り出すナミ。

 少し遅れて戻った亜紀人がサクラを見てニコリと笑う。

「食べなよサクラ…ハンバーガー冷めるよ、みんなで食べよ」

「うん、車で食べてから買い物行く~」


 サクラにとって車の中で物を食べるなど初めての経験だ。


 とてもだらしがないことをしているようで、他人の目が気になる。

 チラリと後部シートを見ると、ナミがデザートやら弁当を思いのままに開けて食べている。

(箸も持てないのか…シートが汚れる…)

 不器用に口に運ぶ度に、なにかこぼしている。

 それを一生懸命、亜紀人にも食べさせようと彼の口に運んでいく。

 食べ方も滅茶苦茶だ。

 ケーキと大福、炒飯を食べたり、気の向くままに食べ続ける。

(まるでネズミだ…ドブネズミみたい…いや、白いからハツカネズミか…)

 溜息をついて、口に運んだハンバーガーは、意外に美味しいと思った。


 車を走らせて、高級ブランド店が並ぶデパートに入る。

 数歩後ろから2人の買い物を見ている、オーダーメイドのスーツに身を包む亜紀人と、いかにも若い女が好きそうなブランドのワンピース、いかにも不釣り合いだ。

「ナミさまに…洋服を買われてはどうですか?」

 ナミが化粧品を見ている間にサクラが亜紀人に話しかけた。

「うん…彼女が欲しがればね」

「サクラ、ハンバーガー美味しかったかい?」

「えっ?…えぇ…美味しかったです」

「あぁ…彼女はそういうの喜ばないかもね…高級な服より…少しいい普段着を揃えるかもよ」

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