第38話 Loose Lunch 緩い昼食

「え~こんなとこで食べるの?」

「そうだよ、和食は好き?」

「お蕎麦好き~」

「蕎麦は…あるかな?なにか食べれないモノあれば聞いておくけど」

「大丈夫~、いらなかったら残すから」

「そう、じゃあ行こうか」

「うん」


「あっ…ナミさま…鞄は置いていかれて構いませんよ」

「コレ?大丈夫、持って行く~」

「左様で…」


 サクラが店の前まで見送って、駐車場へ移動する。

(あんな女が…不釣り合いなんだよ…)

 カッと地面を軽く蹴る。


「広~いね~、お庭キレイ…鯉がいる~」

 懐石が運ばれるが、ナミは好き嫌いが激しく、あまり食べない。

「口に合わなかった?」

「ん…なんか食べたいものがあんまりないね~」

「そう…蕎麦が好きなんだっけ」

「うん」

「蕎麦を頼もうか?」

「ホント?」


 電話で頼むと、天ぷら蕎麦と盛り蕎麦が運ばれる。

「うん、こういうのがいいよ、緊張しなくてさ~」

 ナミは蕎麦をモクモクと食べる。

 どうやらすすることが出来ないようだ。


 箸の持ち方も適当で、懐石を食べるのも苦労していた。

 蕎麦も箸に引っかけるように持ち上げ、汁にボチャンと浸けて食べる。

「ユキヤも食べて」

 と自分の食べかけを渡してくる。

「あぁ…」

 それが楽しいと感じる。


 ナミは鞄からゴソゴソと何か取り出した。

 グミ…コンビニで売ってる安いグミを蕎麦の間に食べている。

(懐石にグミか…変わらないんだな…どこに行っても、この娘は…)


「僕にもくれる?」

「うん」


 そうだな…こんなとこ、この娘は喜ばないのかもしれないな…。

「なんか食べた気がしないな」

「うん…そうだね」

「もう少ししたら…ハンバーガーでも食べようか?」

「あのね、コンビニに美味しいのあるの知ってる?」

「知らない…」

「あとで買って食べよ」

「あぁ…」


 食事の後、庭園を散歩して僕達は初めて手を繋いだ。

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