第37話 Kill Kitten 殺したい…女

 応接室に表れた亜紀人は、スーツを着ていた。

「おはよう、サクラ…今日はよろしくね」

「はい、かしこまりました亜紀人さま」

 少し遅れて彩矢子が入ってきた。

「おはよう、亜紀人。デートだそうね…車を用意させたから、気に入ってくれるといいけど」

「…ありがとう、気を使ってくれて」

「いいのよ、楽しんでらっしゃい」

 そう言うと、亜紀人をすっと抱き寄せた。

「あぁ…楽しんでくるよ」


 玄関には車が用意されており、運転手をサクラが務める。

 赤い『フォルクスワーゲンビートル』

 黒いパンツスーツのサクラがサッと後部のドアを開け、亜紀人を乗せ車を走らせた。

 ランチに用意した店は和食の老舗。

 途中で『ナミ』を乗せて、まずはその店へ向かう。


 待ち合わせに20分遅れで『ナミ』がやってきた。

「少し遅れちゃったよ~」

「いいんだ、逢えてうれしい」

「ホントだよ~心配したよ~」

 そんな会話をしている2人を尻目に、サクラは彼女を送ってきたドライバーに40万を渡す。

「では、24時間後に…ありがとうございます」

「あぁ…」


「なんか高そうなスーツだね~ユキヤのそんな恰好初めて見たよ~」

「似合わないか?」

「そんなことないよ~」

『ナミ』は白いミニのワンピースに黒いパンプス、大きな鞄を肩に掛けている。

「行こうか」


 サクラがドアを開けると、

「ウソ…運転手つきなの?初めてだよそういうの」

「ん…免許持ってないから…僕は」

「そうなの?ウケる~」

 後部シートに2人を乗せ、車を走らせる。

 ルームミラーにナミの細い足が写る、黒い下着を隠す気も無く足をバタバタ動かして話すナミ。

 シート越しに防音ガラスがあるので何を話しているかは解らない。

(下品な女だ…)

 苛立つサクラの運転は少し荒くなった。

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