第36話 Jam Jealously 嫉妬をかみ殺す
「本当によろしいのですか?」
サクラが怪訝そうな顔で彩矢子に確認する。
「いいのよ、あの子がそうしたいのなら…止める理由も無いし」
「しかし…病気とか…その色々と…」
「あの子は性病になんかならないのよ、抗体が私たちと違うの、心配ないわ、少なくても現状確認できてる病気にはかからないわよ、かかっても自らワクチンを作り出すかもよ…そしたらそれだけで金を産むでしょ、フフフフ」
「彩矢子さま…」
「あの子の希望通り、ホテルのスィートを押さえて、そのナントカいう娘を24時間買ってあげなさいな」
「……わかりました」
休暇届と同時に、サクラに渡されたメモ、それはサクラにとっては驚きだった。
24時間の休暇、亜紀人が住んでいた街で最も高いホテルのスィート、そしてデリヘル嬢の指名…。
どこか冷めた野田 亜紀人の名を与えられたNOAのメンバー。
女どころか人間に興味なんてなさそうな、この男が風俗嬢を呼ぶなんて、まったくイメージできない。
年相応に恋愛感情を持っていて、住んでいた街の片思いの相手に会いたいくらいなら親近感を覚えたかもしれないが、風俗嬢を呼べなんて言うとは思ってもみなかった。
少し嫌悪感すら感じる。
それは亜紀人にだろうか…風俗嬢にだろうか…。
サクラにとってNOAの名を名乗れる人は憧れであり、その人に仕えて働けることは自身のアイデンティティそのものだ。
誇りをもっている。
そのために教育され育ってきたのだから。
やっと自分にも使えるべき主が現れ、それは自分とそう変わらないほどの年齢で、唯一無二のデザイナーズベビー。
サクラは嬉しかったのだ。
この人に仕え、この人のために死ぬのだ…そう思っていた。
「下衆な風俗嬢などと…」
応接室で亜紀人を待ちつつ思わず呟いた言葉。
ギリッと歯ぎしりをした、その綺麗な顔は少し歪んでいた。
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