第34話 Hate Haunt 憎悪の溜まり場

 それから2週間、僕は自身のDNAの解析に勤しんだ。

 自分を知れという彩矢子のメモの真意はこういうことだ。

 産まれた経緯を知れ、ではない。

 自分の特異性を知れ、ということだ。


 DNAを継ぎ接ぎしていた時代を経て、追加するのではなく、自らの種の限界まで能力を引き出すという考え方にシフトしていった。

 自分は、そのファーストオーダーだ。


 この2週間で解ったこと、自分が一般の値に比べ、身体的・知能的な限界を超えてはいるものの、基本的には一般の人間と比べれば習得率が早く、そのキャパが大きい程度に過ぎない。

 強いて云えば、シナプスの形成が早く、筋力も短期間で付く。

 幼少期においては、その特異性は際立つ。

 小学1年生と中学1年生じゃ何をやっても勝負にならない、それくらいの差がついてしまう。

 でも、その後は?

 その決定的な差は年月と共に縮まってくる。

 だけど…超えられない壁に突き当たる。

 その先へ行けるのが、僕達、デザイナーズベビーというわけだ。

 壁までは最短の道しるべを示してくれる、それが彩矢子の役割なのだろう。


 気になるのは…7人いるということだ。

 レポートに報告されているのは100人中7人。

 デザイナーズベビーは7人しか誕生していない。

 僕とNo23ツゥスリー、他5人いる。

 ここで働いているのだろうか。

 もしくは別の場所で。

 No23ツゥスリーは異質なのか、おそらくは身体的な向上を目的として誕生あるいは成長した個体なのだろう。

 僕に対する憎悪は異常だ。

 彼は、計画に微塵も興味を持ってはいない。

 その憎悪を周囲に撒き散らすだけの危険な存在だ。


 管理しなければならない危険な存在。

 生かされているのは、研究対象だからだろう。


 まずは、彼と僕の違いを知る必要があるのかもしれない。




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