第13話 Mail message 伝える先

 部屋に案内された。

 先ほどの女性が出てきた入口とは別の入口からさらに奥へ、エレベーターを昇った最上階。

(逃げない…というか逃げれない部屋だからか…)

 実際、ここから逃げるのは骨が折れそうだ、というか無理だろう今は…。

 持ち物の検査すらされない。

 スマホが機能するのは意外だった。

 当然、電波など遮断されていると思っていた。


 部屋には、生活に必要な物は全て揃っていた。

 クラシックに偏っていたが、CDもある。

 20畳ほどのワンルーム風呂、トイレもある。

 冷蔵庫には冷凍食品から飲み物まで揃っている。

 スゥィートルームってのはこんな感じなのだろうか…縁が無いので解らないが。


 僕は、とりあえずメールの返信をしてみた。

『ごめんね返信遅くなった』

『大丈夫だよ、今日、コンビニの新しいプリン食べた、美味しかった』

『そう、プリン好きなの?』

『うん、甘いから好き』

『そう、甘いの好きなんだ』

『うん、アンコも好き、今度、買ってあげるねプリン』

『ありがとう』

『いつ逢える?』

『ちょっと、しばらく逢えないかも、また連絡する』

『え~そうなの?解った待ってる。またメールするね』

『うん、待ってる』


 どうせ見ている…僕の居場所を特定したんだ、携帯からか…何らかの記録からか、それは解らないが、手の内にある僕の行動を抑制しないのは、その必要がないからだ。

 このメールのやりとりだって把握しているはずだ。


「ふふっ…頭はいいわ、暗にしばらくココにいるって私たちに言ってるのよ」

「さすがというわけですね」

「姉さんが連れだしたときは、どうしようかと思ったけどね」

「犠牲を多く出した割には行方知れずになってしまいましたしね」

「まぁ…成長過程を管理できなかったのは残念だけど、素材は間違いのない逸品だもの…これから挽回の余地はまだあるわよ」

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