第12話 Lady speak 彼女曰く

 それから、さらに1時間車がようやく停まったのは田舎の山に似つかわしくない近代的なビル。

 無機質な四角いだけのビルが、妖しさを醸し出している。

 ここで何が行われているのか…解らないまでも、ロクなことはしていないのだけは解る。

 なにせ、僕が連れて来られるような場所なのだから。

「降りろ、入口から、そのまま通路を真っ直ぐ進め…我々の仕事はここまでだ…今はな」

 老紳士が杖で入口を指して、ニタッと笑った。

 言われるがままに進む。

 足には足枷が付けられており、チョコチョコとしか進めない。

 無人のゲートを3つ潜ると、広い部屋に出た。

 先ほどまでの白一色の通路と違い、白を基調としながらも、それなりの人間味のある配色でインテリアが揃っている。

 生活感があるかといわれれば、そうでもないレベル、モデルハウスのような…作り物の部屋といった感じだ。


 正面のドアが開いて、白衣の女性が入ってきた。

 見た目からして50歳前後だろうか。

「成長したのね、No42フォウツゥ…間違いないわ」

 僕の足首の刻印を指でツツッとなぞる。

「ずいぶんと酷い目に遭っていたそうね…日本の施設に捕らわれたと知ったときは絶望したわ…でも自力で逃げ出して…よく無事でいてくれた…嬉しいわ」

「僕は…なんなんだ?」

 唐突な質問を投げかけた。

「そうね…順を追って説明するわ、でも明日よ…今日は眠りなさい、特に起こしはしないから、気持ちが落ち着くまで眠りなさい、部屋も用意してある」

 そういうと僕に鍵を渡した。

「この子の拘束を解いて、早く!!」

 強めの口調で、奥にいた男に命令する。

「いいのか?逃げるとは思わないのか?」

「逃げる…とは思わないわ、そのつもりなら逃げてるんじゃない?」

「どういうことだ?」

「ん?あなたなら、そう難しいことじゃないんじゃないの…たぶん」

「部屋にカメラも付いてないし、出ようと思えば、それでもいい…でも、話くらいは聞く気になっているから大人しくしてるんでしょ?違う?」


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