第10話 Jam tonight 混乱の夜

 緊張した…送る前はもちろん、送る直前がピークかと思った。

 だけど送ってからの方が緊張は増した。


 落ち着かなくて…忘れようとシャワーを浴びた。

 けれど、ドアを開けっ放しにして、足ふきマットの上にスマホを置いたままで。

 いつ鳴るのか…その瞬間を僕は待った。


 狙撃でターゲットを狙うときには緊張はしなかったのに…。

 むしろ落ち着いていた…数時間でも冷静に身動きせずにスコープを覗き続けた。


 それなのに…僕は今、完全に落ち着きを失っている。

 シャワーを浴びても、スマホは鳴らないまま…僕は、部屋でじっとしていることが出来ずにコインランドリーに向かった。

 ジャージのポケットにスマホを突っ込んで、ポケットの中でそのスマホを握りしめる。

 コインランドリーの傾いた椅子に座り、いつのだか解らない週刊誌に目を通す。

 まったく読んでいない、というか頭に入ってこない。

 文字を追うだけ。


 カラッと扉が開いた、チラっと目を扉に向ける。

 反射的に、相手の挙動を観察してしまう。

 杖をついた初老の紳士が狭い歩幅で入ってきた。

 椅子に座ったまま、少しだけ腰を浮かせる…すれ違う刹那。

 杖がヒュッと喉元に突きつけられる。

 警戒はしていた…反応が遅れただけ。

No42フォウツゥ…そんなに鈍かったかね…隠れるのばかり上手くなって戦闘は忘れたのかね?」

 杖で顎をクイッと持ち上げられた。

「誰だ…施設の?」

 ドゴッ、老紳士の回し蹴りが腹にめり込む。

「ハッ!!」

 老紳士の蹴り足に押されて後ろへ飛ばされる。

「探したよ、キミには金が掛かっているんだ…回収に22年掛かるとはね…」

 老紳士がスッと杖を上へ向けると、ワンボックスカーから4人のスーツ姿の男が降りてくる。

 荒々しく車に押し込まれ、あっという間に拘束された。



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