第6話 Fall into a pit 堕ち続ける…

 カニカマなんて初めて食べた。

 酒も飲まないし、必要なもの以外は買わない。

 僕が買うのは、バランス栄養食や保存食がほとんどだ。

 買えないわけじゃない。

 例えば、ハンバーガーや牛丼も食べたことがないわけじゃない。

 ただ…なんだか悪いような気持ちになる。

 僕は子供の頃から、人の死に触れてきた。

 友達だとは言わない、そんな関係が解らない。

 でも…銃の使い方を教えてくれた人だったり、隣で銃を撃っていた人だったりした。

 それを仲間と呼ぶのなら…僕はそんな仲間を大勢失った。


 僕は…それが不思議だったんだ。

 なぜ…そんな簡単に死ぬんだろう?


 飛んでくる弾を避ければいいだけじゃないのか…振り下ろされるナイフを交わして突き刺せばいいだけじゃないのか…。


 簡単に死に過ぎるんだ。


 僕の面倒を看てくれた女性兵士のチームも全滅したんだ。

 僕を残して全員死んだ…殺された。


 最後に僕の手を握って…なにか言ったんだ。

 なんて言ってたんだっけ。

 たしか…

「アタシが間に逃げるんだ…いいね」

 そうだ…そう言って彼女は敵に投降したんだ。


 僕は言われた通りに逃げた…。

 夜になってソコに戻ると裸の彼女が転がっていた…。


 闇に紛れて…敵に夜襲をかけた。

 全員殺したんだ。

(命令を守らなかったな…なんでだろう…今でも思い出すと不思議な感覚になる)


 きっと大事な事だったんだと思う。


 食べ終えたカニカマの袋を洗って、財布に入れた。

 なぜだろう…彼女のことを考えると、あのときのような不思議な感覚になる。


 寂しいような…切ないような…悲しいような…。

 だって…僕は今、泣いている。


 そうこれは、感情が揺さぶれるときに起こる現象なんだ。

 施設で習った。


 不思議なのは死んだわけでもないのに…

 彼女のことを思うと、涙が出るのはなぜなんだ。


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