裸の僕は勇者になります

@kure4

第1話 はじまり

 目が覚めるとそこは草原だった。

 青い空と緑の草がずっと続いている。

 後ろから肩を叩かれた、振り返ってみるとそこには老人が立っていた。


「勇者よ、この世界で悪魔と戦ってくれ」


 白い髪で白いひげの老人がそう言った。僕は言われたことが何も理解できないまま立ち尽くしている。とりあえず何か聞かないと、そう思った僕は老人に話しかけた。


「勇者?あなたはだれですか、ここはどこですか?」

「ここはドルーワイ、お前さんがいた世界とは別の世界、異世界じゃ」

「異世界?」

「うむ。そして私はこの世界の神である。悪魔との戦いに決着をつけたいと思い勇者としてこの世界にお前さんを召喚したのじゃ」

 老人は僕の質問に答えてくれた、とりあえず言葉は通じるみたい。

「ありがとうございます。神様お願いがあるんですけど・・・」

「なんじゃ?」

「僕に羽織るものをくれませんか?」

 そう、僕は今裸なのである。すっぽんぽんだ。家のお風呂で湯船に浸かって眠ってしまったが、次に目を覚ますとここにいたのだから。


 その時突然神様がローブを脱ぎ始めた。

「!!!」僕は驚き言葉が出ない。

「ほれ、これをやろう。」神様は脱いだローブを差し出した。

「今はこれしかもっていないのだ。」

 神様だから服なんて何でも出せるでしょって言いたかったけど、さすがに言うのは辞めてありがたく服を頂いた。

「ありがとうございます。勇者として戦うのはわかったのですが元の世界にはいつ帰れるのでしょうか?突然風呂から消えたので家族も心配してると思うのですが。」

「あーその心配は無い。お前さんはこの世界に召喚されたと同時に元の世界での存在は消えているから帰りを気にせず思う存分戦ってくれたまえ」

言ってる意味が分からない

「じゃあ、元の世界には・・・」

「なんじゃそんなに元の世界に戻りたいのか、ならばいい事を教えてやろう。」

神様が話し続ける。

「勇者としてこの世界の最後の悪魔を倒したものが願いを叶えられる。その時に元の世界に帰りたいと願うのじゃな。じゃが、この世界にはお前さんの他にあと9人勇者がいる。願いを叶えられるのは一人だけ頑張るのじゃな。」

理不尽すぎる。神様の言葉にそう思った僕はもう神様が悪魔にしか見えなかった。

「私を殺すと神様になれるし願いも叶えられるぞ。じゃが神を殺すなんてそんな悪魔みたいなことできるはずがない、他の9人の勇者もそう思って戦っている。」

そう神が言った時、僕は思ったことを神様に言った。


「神様、殺させてもらいます。」


そう言った瞬間、僕の体は宙に浮いて巻き起こる風とともに飛ばされた。




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