第15話 朝チュン(誤用)。

 おはようございます、もう昼です。


 全裸で寝落ち。

 すえた臭いに満ちた部屋だと思うけど、正直もう鼻が馴れちゃって気にならない。

 太い腕に抱きしめられたまま寝たせいか、体がバキバキいう。

 背に回る腕を「邪ぁ魔っ」と退けて起き上がる。窓から入る光は高い。

 裸の肌にはカピカピと昨日の名残が残っている。その上、起き上がるときに腹に力をいれたら、中からとろりと出て来る感触にぞくっとして、内股に力を入れてそれ以上の流出を阻止する。

「テン」

 低い声が甘えるように私に呼びかけ、彼は上半身を起こした私の腹に顔を埋めるように抱きついてくる。いいのかな、そこ、カピカピしてるんだけど……。

 あ、いや、そうじゃなくて、大事な事を忘れてた!

「ヒトセさん、私の名前なんですけど」

「ん?」

「テンナではなく、レンナ、と申します。『かじ 恋奈れんな』が本名で、テンナは双子の姉の名前、なんです……」

 申し訳の無さに、語尾がちいさくなる。

 ええ、昨晩散々テンと呼ばれていたので……。ヒトセさんも、起き上がってばつが悪そうな顔をした。

 そりゃそうだよね、一生懸命他人の名前を呼んでたんだもんね。

「そっか、テンじゃなくて、レンナか、可愛い名前だ。俺も、詫びなきゃならないことがある。俺の名も、根古ではなく久賀森くがもり 飛年ひとせだ」

 クガモリ……。

「久賀森産業さんと、ご親戚かナニカ、ですか……」

 最大手ゼネコンと呼ばれる会社と同じ名字であることに、言葉が固くなる。

 関連会社は多岐に渡り、ゆりかごから墓場までを実戦している。

「遠縁です」

 そう言いながら彼は私をベッドに引きずり込んでもう一回戦仕掛けてきて、結局、抜かずの三発を体験してぐったりしている私を抱きしめて、満足そうにベッドに転がった彼とまったりとした時間の中、私に向こうに戻ったら結婚式を挙げようとか、いやいや式をするのは従姉妹のを見て凄く大変そうだったから最低限にしましょうよと提案したり、まずはお互いの両親に挨拶しなきゃとか……。



 夢物語を紡いでいるようで、楽しかった。


 この世界に居る間だけの、夢物語だと、わかってるから。


 向こうに帰る日まで、もう少しだけ、夢を見続けよう――

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