終章9話 笑顔で話すために

 日元教国北部にある険しい山岳地帯。


 日本地図に重ね合わせると長野県の上高地にあたる場所の奥地に、ひっそりと口を開けている洞窟があった。


 龍神窟と呼ばれ、古くから龍神の棲家へ続いていると信じられている場所だ。

 入口からは絶えずマグマが流れ出していて、内部への侵入を拒んでいるかのよう。


 今から潜るのはそんな場所だ。

 龍神の元に続いている確証はないが、それはどの場所から潜っても同じこと。

 それなら、伝承のある場所の方が良いという判断でだ。


 身体中に呪術を重ねがけしてもらったので、マグマだろうが絶対零度だろうがしばらくは平気なはず。


 食料は日元オリジナルの簡易食料を半年分用意した。

 ブヨブヨしたグミみたいな食べ物だが、一粒で一日に必要な最低限の栄養素が摂取できるらしい。


 マシン子は俺が戻るまで延命処置を施してもらえることになった。

 時間は無限ではないが、きっと間に合わせてみせる。


 慎重に洞窟内部へと足を踏み入れる。

 呪術で護られてはいるが、足元から伝わる熱が恐怖を煽る。


 でもここで怯むわけにはいかない。


 もう一度、マシン子と笑顔で話すんだ。


 そのためなら、どんなことでもやり遂げてみせる。






 ~ 終章 了 ~

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