終章4話 結婚します③

 結婚宣言をしてからは早いもので、今日は待ちに待った結婚式。

 そして式は菊川さん主導の元、滞りなく進んでいる。


 俺側の参列者は異世界という特異な環境もあって父と母と広島だけ。

 マシン子側の参列者もブラン子と禰宜さんとゴロウさんだけだ。


 菊川さんはマシン子の結婚を心から祝福してくれているが、どうも結婚の事実を広めたくはないらしい。『教皇様にしられると面倒だからね』とそれだけいっていたが、何かこの国の風習的にまずいのかな?


 ゴロウさんが参列していたのにはビックリしたが、聞けば禰宜さんの息子らしい。

 そういわれてみれば名字も同じだし、何となく外見(頭部)も似ているような。


 広島はメグさん同伴を希望したが、水妖族の入国許可が降りなかった。

 メグさんには晴れ姿を見てもらいたかったのに残念でならない。


『少し見ぬ間に義経は成長したようじゃな。マシン子も上等の家畜並に美しく育っておる。妾の歌を聞かせられぬのは残念じゃが、そうなると主役が入れ替わってしまうからの。ここに隠れながら祝福しようぞ』


 この念波はメグさん!

 どうやったのかは解らないが入国できたようで良かった。

 でもお願いだから、そろそろマシン子を人間認定してあげて下さい。


 式の形式は日本の神式結婚式とほぼ同じで、参進の儀から始まり三々九度の盃に続いて指輪を交換する。そして十回以上にも及ぶお色直しの後、巫女の舞い。


 かつて俺の前に立ちはだかった巫女見習い達が俺達を祝福して舞い踊る姿は、なんとも感慨深いものがある。


 それが終わると親族盃の儀となり、最後に斎主さいしゅである菊川さんが神様に報告をして結婚式はめでたく終了となった。


「義経、私幸せよ」

「これからだぜ。俺達の幸せは今がピークじゃないぞ」


「そうね、何だろ涙が……」

「俺が世界一幸せにしてやるからな」


「うん、あり……が……ううっ」


 こうして俺達は幸せへの扉を叩いたのだが……。


 よくよく考えてみると、マシン子の戸籍謄本ってどうなってるんだ?

 俺達は日本に住むわけだし住民票がないと不便に違いない。

 そんな疑問が今更ながら頭をよぎったので菊川さんに尋ねてみた。


「真真子は異界巫女の任に着いた時点で、日本の国籍を与えられているよ」

「そうなんですか?」


「いってなかったかい? 地球人の祖先は日元人なんだ。当然、人一人の情報を操作できるくらいの権力組織があるわけさ」


 そうですか。ありがとうございました。聞かなかったことにします。


 さて、これで俺達は本当に夫婦となれた。

 泣き腫らした目で微笑むマシン子をお姫様抱っこしながら、俺は神社正面に停められてある自動塊ウェディング・バージョンへと歩く。


 父さんが、母さんが、広島が、ブラン子が。菊川さんが、禰宜さんが、ゴロウさんが。笑顔で祝福してくれている。


 おめでとう、しあわせにな。


 そんな声に包まれて俺達は出発する。


 二人三脚で築き上げる輝かしい未来に向かって。

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