終章2話 結婚します①
異世界での行商は順調に業績を伸ばして行った。
呪術付与アイテムが日元教国外にほとんど出回っていないのが幸いした形だ。
他種族を締め出す国策はどうかと思うが、俺達の役に立ってくれたのだから深くは考えずにおこう。
日本でのネット販売も売上が安定し始めた。
これに関しては広島の功績が大きい。
彼がシステム周りを改造してくれたおかげで、客が今まで以上にトップページから商品ページへと流れやすくなったのだ。
その広島だが、大学を卒業したら異世界で暮らすといい始めた。
どうも俺のしらないところでメグさんと出会い、恋に落ちてしまったようだ。
そして。
何もかも順調な時だからこそ、俺はその流れを自身に取り込むべくある決断をしようとしていた。
「父さん、母さん。俺、結婚したいんだ」
「お父様、お母様、初めまして。菊川真真子と申します。私と義経さんの結婚をどうか認めて下さらないでしょうか」
マシン子が改まった言葉で喋るのを初めて聞いた。
ホント、何でもそつなくこなすよな。
「まあ、なんだ。取り敢えず座りなさい。母さん、お茶」
「あ、はいはい。すぐ煎れてきますね」
何だかソワソワしている親を見るのも面白い。
「義経。結婚するのは良いが生活は大丈夫なのか? こんな事はいいたくないが、お前はこの前までフリーターだっただろう。結婚して好きな人を養うのは相当な覚悟が必要なんだぞ、そこを解ってるのか?」
それはもっともな意見だ。
今まで好きに生きてきた俺が結婚なんて口にしたんだ。
親なら心配にもなるだろうと思う。
「父さん。正直いって俺には何も解らない。でも、マシン子と二人で生きていくためなら何でもする覚悟がある」
「お父様、私も義経さんと一緒に生きられるならどんな苦労でもいたします」
「ううむ……。まあ、なんだ。母さん、お茶はまだか」
「お茶お茶って煩いわね! 私はお茶くみロボットじゃないのよ。昔は私のことを気遣ってくれたのに今じゃお茶、飯、新聞、くらいしかまともに話さないんだから。はぁ、もう一度昔に戻りたいわぁ。そうしたらもっと素敵な男性を選んだのに~」
「ちょ、か、母さん……」
「ちょ、お、お前……」
「な~んてね、冗談よ。はいお茶」
母さんのニヤけた顔が何だか恐ろしい。
「よっちゃん、貯金は幾らあるの?」
「えっと……二千万くらいかな」
「そんなに!」
「そんなにか!」
そこ、ハモるとこじゃないだろ。無駄に息ピッタリだな。
「それなら私は何もいわないわ。綺麗事をいっても最終的にはお金が物をいう場面って多いじゃない? 母さん達も結婚当初はお金で苦労したものよ。父さんが独立する前は、私も朝からパートに出てたのよね~。あの時は幸せだったけど辛かったわ~。でも父さんったら毎晩私のことを――」
「か、母さん! お茶、お茶もう一杯っ!」
「うふふ、はいはい。……アナタ、認めてあげましょう」
「……そうだな。二人の気持ちも同じで当座の預金もあるなら大丈夫か」
「それじゃあ!」
「ありがとうございます!」
父さんと母さん、俺とマシン子の顔に笑顔が浮かぶ。
「よっちゃん、頑張るのよ」
「義経、マシン子さんを幸せにするんだぞ」
マシン子を世界で一番幸せにするのが俺の目標だ。
そして必ずその目標を達成してみせる。
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