5章3話 本当に呪術使えたんだな
「じゃあ行ってくる。あとは頼んだぞ」
「お任せ下さい」
「ブラン子ちゃん、いつものアレ。アレお願い!」
「広島さん、その類は嫌われるとネットに書いてありました」
「嫌われ上等! 俺は他人が作り上げた枠には収まりたくないんだ」
「仕方がありませんね、では。お兄ちゃん、行ってらっしゃい」
「うんうん。お兄ちゃん行ってくるよ!」
広島はブラン子と初めて会った時から、自分のことをお兄ちゃんと呼ぶようにお願いしていた。妹が欲しくて堪らなかったんだろうな。良い風に解釈すれば、だが。
広島が満面の笑みを浮かべているのでツッコむこともせず、俺達は神社の鳥居から腐敗の砂漠へと降り立った。
砂漠の真ん中にポツンと立つ転移鳥居。
しかし今回は砂漠と鳥居しかなかったこの場所に、白い物体が仲間入りしている。
ブラン子の取ってきた自動塊だ。
この自動塊は山荘にあった物なので、ブラン子か俺がいれば生体認証で動かせる。
実はこれのことをすっかり忘れていたので、メグさんの元へはズルムケガラスで向かおうと思っていた。それはマシン子も同じだったようで、生ワカメをご機嫌で袋いっぱい持ってきている。それはもう振る気満々で。
ウィン――
自動塊に触れ、開いた入り口から自然な動作で乗り込もうとした。
「待って義経。ズルムケはどうするのよ?」
「自動塊があるならズルムケはいらないだろ?」
「でもワカメもあるのよ? ズルムケにしましょうよ」
「断る。自動塊の方が安全だからな」
「義経はズルムケが嫌いなの?」
「かつてお前が引き起こした大怪獣ワカメ戦争を忘れたのか」
「マシン子さん、もう一回ズルムケっていってみて。録音するから」
広島はズルムケをしらないから、そんな悠長な台詞をいえるんだ。
あの恐怖を体験したら二度と軽口は叩けなくなると思うぞ。
一度はズルムケに乗せてみても良いが、それは自動塊が目の前にある今じゃない。
「ほら、むくれてないで行くぞ」
「今回だけだからね」
何が今回だけなのかさっぱり解らない。
次回も次々回も自動塊がある限りズルムケには乗らないからな。
「それはそうと、メグさんの居場所が解らないのは辛いな」
「解るわよ? 以前プレゼントしたアクセサリーに呪術を掛けておいたから」
呪術?
店のアクセサリーにも呪術を使うとか何とかいっていた記憶が。
色々あって忘れていたが本当にそんなファンタジックな技が使えたのか。
「そして、ジャーン! 名付けてスレスレーダー」
マシン子が荷物の中から取り出したのはデカいストップウォッチみたいな機械。
どこかで見たような気もするが全く思い出せない。
「このスレスレーダーは私が呪術『目印』をかけたアイテムの位置を正確に表示するの。メグさんとゴロウさんの位置はこれでバッチリよ」
「おお!」
ゴロウさんの居場所もだと?
もしかして別れ際に渡していたスレスレ人形にも呪術を掛けていたのか。
やるな、マシン子。
「同時に表示出来る数は七つよ」
「世界に散らばったボールの数と一緒だね! ブヒッ、わくわくしてきたぞ!」
プチッ。『スレスレネタヤメロッテー』
うん、持ってきて正解だった。
いちいち俺が声を荒げなくて済むのが良い。
「スレスレーダーによると表示されている点は二つ。一つはこの近くだからゴロウさんね。まだ地下遺跡にいるみたい」
「変わった人だったけど、意外にも仕事熱心なんだね」
「熱心に地下で変態してるかもな」
「もう一つは少し北にあるわね。きっとこれがメグさんよ」
「じゃあマシン子、ナビは任せた」
「ええ、任されたわ」
「遂に、遂に、めぐめぐめぐめぐ……」
広島の発作がまた始まった。
酷くなる前に、メグさんを探し当てないとだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます