5章 ハートライン編
5章1話 順風満帆
砂漠の薔薇を手に入れ、目玉商品となるアクセサリーが完成。
広島がウェブページの最終チェックをしてページのアップも完了。
オークションサイトにも激安商品を幾つか置いてリンクを貼った。
これで
そうのんびりと構えていたのだが、それは大きな誤算だった。
兆しはあったが、本格的にそうなったのはオープン三日目位からか。
「また注文が入ったぞ! 在庫は大丈夫かっ」
「もう在庫なんてないよ! 急いで作ってもらわないと」
「そんなにすぐ作れないわよ!」
「梱包材がなくなりました」
まさかの大反響。
オークションに載せた激安商品の人気は頷けるが、リンクを辿ってロック・レンジャーサイトまで来てくれる人がこんなにも多いとは思わなかった。
サイト内の商品価格は現在オープン記念で二割引き。
送料も期間内だけ半額。
さらに商品を購入してくれた人達全員に『スレスレ人形』なるマシン子イチオシのキーホルダーもプレゼント。
広島の助言で攻めの姿勢に出てはいたが、それでも予想以上に反響が大きい。
一体何が良かったのか俺にはさっぱりだが、顔を見合わせてニヤリとしている広島とマシン子の手柄なのは間違いない。
ただ反響がありすぎるのも困ったもので、準備していた商品が底をついてしまったのだ。
「広島くん、販売可能個数の設定してた?」
「ごめん、すっかり忘れてた! 大急ぎで組み直すよ」
「梱包が間に合わん。ブラン子、午前中出荷はあと幾つだ?」
「あと七つです。……八つになりました」
「広島、急げ! もうこれ以上注文が入ったらヤバい」
「これでも百のまとめサイトを作った男。三分でプログラムを組み直してみせる!」
「九つになりました」
「一分よ! 広島くん、一分でお願い」
好調すぎるスタートに、俺達は嬉しい悲鳴を上げ続けていた。
商品のラインナップは、マシン子お手製のアクセサリー(指輪、ペンダント、ネックレス、バングル等)の他に、加工していない鉱石各種。
景品のスレスレ人形キーホルダーも単価五百八十円で売りに出している。
プチッ。『スレスレヤメロッテー』
このキーホルダーが意外と人気で、今日だけでも四十個以上の注文が入っていたりするのだ。
粗品を扱うサイトからマシン子が見つけだした音声内蔵人形型キーホルダー(男の子タイプ)で、台詞はこちらで変更できる。オプション料金を払って台詞パターンも増やしたらしい。
これをあの超摩訶不思議ページであるマシン子オリジナルページを作っている時、既に発注していたというのだから頭が下がる。ちなみに今のページにはマシン子オリジナル時代の面影はゼロだ。
スレスレ人形と名づけた由来は英語のSURE(信頼できる)から来ているらしい。ローマ字読みをしているのは彼女曰く『いいやすいから』だとか。
スレスレ人形は商品単価が安いので送料半額中は遠方へ出荷すると赤字なのだが、アクセサリー販売も好調なので充分補填できている。
『それも戦略さ』といっていた広島は正しかった。
コイツは昔から変な所で自信家だったが、今はそれが頼もしい。
仲間に引き入れて本当に良かった。
ブラン子はこちらに帰ってきてから以前より活発になった気がする。
命令以外のことを、自分で見つけようとしているのが傍から見ていて解る。
自動塊を取りに行った時、何かあったのかもしれない。
とにかくそんな感じで俺達は今、順風満帆だ。
と、思っていた。
翌日、広島が精彩を欠いた顔で出勤してくるまでは。
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