4章9話 赤い残痕
自分の身体も心配だが、今はマシン子達のことが気にかかる。
「実は仲間と
「逸れたとか抜け落ちたとかは無粋な言葉だね。僕は好きで禿げているいわばエリートハゲラーなんだ。で、仲間って?」
ハゲラーって新しい言葉だな!
この人のペースに乗せられると進む話も進まなくなる。
「男女二人組、見てない?」
「もしかして類稀なる脂肪男と異界巫女の二人かな?」
「知ってるのか!」
「少し離れた場所で倒れていたから、しっかり介抱してテントまで運んであるよ。それにしても異界巫女が義経くんの仲間だったとはね」
介抱の仕方が気になるが生きているなら良かった!
マシン子はもう巫女じゃない気もするが、勘違いを正すのも面倒だしこのままで良いか。
それにしても、よくマシン子が異界巫女だってしってたよな。
もしかしてマナティー親父と関係があるのか……。
いやいや。
もしそうなら俺の事もしってるはずだ。
ゴロウさんからは好意的な印象を受けるし、下手に人を疑うのは良くないよな。
「ゴロウさん、ありがとう! ただのおっさんじゃないと思ってたぜ!」
「積み重ねた歳月を物語る白い物も生えていないのに、おっさんは酷いなぁ」
その自虐ネタはわざとなのか、それとも素なのか。
どう対応したら正解なのか掴みかねる。
「じゃあ僕は
二人共無事ならひとまず安心だ。
それよりも気になるのは
名前からして珍しい鉱石のような気がする。
異世界特有の鉱石だとしたら、見てみたい。
「こんな地下遺跡に、そんな鉱石があるのか」
「ここだからあるのさ。義経くんも龍石の残痕を辿ってきたのだろう?」
「ここにきたのは偶然だし、俺達の目的は別の鉱石なんだ」
「そうなんだ。まあいくらロックレンジャーでも普通はこんな場所に来ようとは思わないよね。ほらあの天井が何だか解るかい? あれは国喰いの外骨格なんだ」
国喰い……。
確か以前、マシン子とメグさんから聞いた巨大海洋生物の名前だ。
大昔に国一つを潰したバケモノの外骨格が天井になっているのか。
道理で所々風化して砂が落ちてきている訳だ。
広島のいってた地下水脈説は外れだったってことだな。
だとしたらその上に積もっているパウダー状の物も、砂じゃなくて国喰いの身体が分解された物なのか?
「国喰いのせいで古代機人の国は滅んだけれど、こんな風に標高が低かった場所の一部は残っているのさ」
「へぇ、何だか幻想的な話だな。浪漫さえ感じるよ」
「感じるよね! 男ならそうでないとね!」
そういうとゴロウさんは、徐に手足を大の字に広げ目を閉じた。
彼の体内から光の粒子が溢れ出して広く薄く拡がって行く。
その姿はまるで光の粒子を放出する核のように神々しい。
「君もロックレンジャーなら見えるだろ? 龍石の『赤い残痕』が」
赤い残痕……。
俺が見えているこの赤い景色は龍石の残痕とやらなのか?
「龍石の宿った肉体は崩壊しても残痕が残る。残痕は存在している龍石に吸い寄せられる。だからこの辺りには龍石があるに違いないよね。……見えたっ」
「見えたって何がだよ?」
「波動さ。僕には生まれつき特殊能力があってね、全裸で瞑想すると龍石の放つ波動が解るんだ。龍石の波動を感じるのは龍神様の息吹を感じるのと同義。嗚呼、己の中にある龍の魂が喜びに打ち震えているっ!」
興奮するゴロウさんに比べ、俺の精神はガリガリ削られていた。
龍神様が何なのかは解らないが、猛々しくうねる彼の龍神様がえらいことになって揺れているからだ。
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