4章4話 砂漠の薔薇を求めて

 広島の作ったウェブページは素晴らしかった。


 トップページから買い物カートまでの流れがとてもスムーズで、タブの切り替えも滑らか。オマケに見た目も従来(マシン子お手製)より千倍くらい良い。


 では早速、ウェブ上にアップしようと思ったのだが……。


「ダメだね」

「おいおい、職人気取りかよ。充分な出来栄えじゃないか」


「ページ構成の話じゃないよ。ウェブページは世界中で一兆以上あるんだ。そんな中に何もしないで突撃しても埋もれるだけだよ」

「じゃあ、どうするんだよ」


「アクセサリーやジュエリー、天然石や鉱石とかのキーワード設定だけはしてあるけど確実性が全くない。だから例えばオークションサイトに捨て値で商品を出して、そこにこのページのURLリンクを貼るとか、悪評覚悟で色々な掲示板にリンクを貼るとかしないと、いつまで経ってもアクセスは増えないと思うよ?」


 広島がいってる事の九割理解できない。

 ウェブに上げたら誰かが勝手に見てくれるんじゃないのか?


「それに目玉商品。折角このページにお客さんを誘導しても目玉商品がないとすぐに別サイトへ行っちゃうよ。他店にはないここだけの目玉商品が必要だね」

「そうね。目玉商品は確かに必要ね」


 マシン子が会話に食らいついてる。

 まさか俺だけが解ってないのか?


「あとは梱包や配送の準備、在庫切れをなくす方法、詳細注意事項欄の作成なんかも考えないといけないけど、これらはまあ直接集客に関係ないから最後でも良いかな」

「なるほどね。広島くん、勉強になるわ」


 置いてけぼりをくらってる気がする。

 何か、何かいわなければ……。


「じゃあ取り敢えず目玉商品を決めないとね。でも実際問題、それがかなり難しいのよね。何を出してもどこかの二番煎じっぽくて」

「そうだね。ササッと調べた限りじゃ安くもなく高くもない鉱石を使ったアクセサリーで目玉商品になり得る物なんて『砂漠の薔薇』くらいだったしね」

「砂漠の薔薇?」


「砂漠のオアシス跡等に落ちている石膏や重晶石の結晶よ。見た目が薔薇の花弁みたいなの。オアシスが干上がる時に結晶が成長して、水に含まれている硫酸カルシウムや硫酸バリウムの多さによって形や色が変わるのよ。価格は安いけれど人気はあるわね」

「意外と多く見つかるから原価も安いんだ。でも物によっては凄く綺麗で高価な物もあって一概に安物だとバカに出来ない魅力があるんだよ」


 コイツ、何でそんな事しってるんだ?

 俺も以前に比べると鉱石知識は増えたと思っていたが、まだまだという事か。

 でも……、砂漠で見つかるなら何とかなりそうじゃないか。


「じゃ、それを探しに行こうぜ」

「砂漠って『おだいばビーチ』のことじゃないのよ? あそこは近いけれど砂漠でも砂丘でもない人工の砂浜よ?」


「それくらい解ってるって。でも砂漠ならすぐに行けるじゃないか。それも見渡す限りの砂漠にさ」

「義経、頭打ったのか?」

「……そうか、そうよね! さすが義経」


 そうなのだ。

 そこにオアシスがあるかは解らないが、砂漠で良いのなら無料で、お手軽に、しかも一瞬で行けるのだ。


「行くか、マシン子?」

「ええ、もちろんよ!」

「ちょっとちょっと、何の話をしてるのかな?」


「広島はしらないんだったな。マシン子、連れて行って良いか?」

「ええ、広島くんはもう私達の仲間よ。一緒に行きましょう!」

「行くってどこに?」


 その答えは一つしか無い。


「腐敗の砂漠さ!」

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