4章 腐敗の砂漠編

4章1話 マシン・オリジナルウェブページ①

 異世界の日元教国から逃げ帰って二週間が過ぎた。


 あると思っていたマナティー親父からの追撃は、二週間が過ぎても一向にくる気配がない。


 こちらの世界で禰宜職をしている陸奥さんは日元教国出身なのに、何故か日元教国を嫌っていて俺達に協力的だ。異界の門を護る禰宜さんが味方なのだから、これほど心強いことはない。


『異世界転移をする程、肝の座った奴は日元にはおりゃせんよ』と禰宜さんもいっていたし、俺達が日元教国に近づかない限りは安心して良いのかな。


 マシン子は最初こそ警戒して神社と工房の往復を繰り返していたが、ここ数日は工房に篭ってアクセサリー作りに励んでいる。ストックしている材料は豊富にあるのでそれは構わないが、取引先の国から逃げてきたのに新たなアクセサリーを作ってどうするつもりなのだろう。


 ブラン子は俺の部屋に寝泊まりしてる。彼女の場合は警戒心や緊張感が最初からないのか、日々を淡々と過ごしている。少女化した姿は今もそのままで、大人体型になるには外装(戦闘用肉襦袢など)が必要なのだとか。


 ちなみに聞いて驚いたが彼女はなんと七歳だった。

 彼女に身体を洗ってもらうことを想像して悶々とした日々は一体なんだったんだ。


 俺はといえばマシン子と似たようなもので、最初の数日こそ警戒して武器や防具になりそうな物を買い漁ったりしていたが、一週間もすぎると気が緩み、実家へ顔出しに行ったりしていた。


 実家に行くと俺の心配した通り、ジャッキーフィギュアがうんこ座りさせられていてハチマキまで巻かれていたのでファイティングポーズに直してから帰ってきた。ついでに庭の隅に積み上げていた石も持てるだけ持ってきた。


 とまあこんな感じで二週間すごしていたのだが。


「ショップを開くわよ」


 マシン子が鼻息も荒く、ノートパソコン片手に部屋へ飛び込んできたのは正午過ぎ。ちょうど食後の運動でブラン子とスクワット対決をしていた時だ。


 ブラン子は身体能力特化の戦闘型人工生命体なので『負けても恥ずかしくない』と、三百回を越えた辺りから思い始め、そろそろ体力的限界にさしかかったタイミングでのマシン子の登場だった。彼女のおかげで俺の大人としての威厳は保たれた。


「何のショップをやるつもりなんだ?」

「アクセサリーショップに決まってるじゃない。義経が素材を集めて私が加工。まさにパートナーとして二人三脚って感じでしょ?」


「アクセサリーショップなら地下にあるじゃないか」

「あそこは工房。私がいってるのは商品を販売するショップよ」


「改装するのか? ここだと立地条件が悪すぎるだろ。墓穴を掘りに行くようなものだぞ」

「墓穴を掘っても、突き抜けたなら私の勝ちよ」


「お前はどこからでも撃ってくるな。しかもコアな螺旋スレスレだな!」

「アハハ。冗談はともかく、お店はウェブ上で開こうと思うの」


 確かにウェブ上なら改装費もかからないし場所の問題もない。

 それにマシン子がやりたいのなら、俺は無条件で協力してやりたい。


「なるほどな。良いんじゃないか?」

「で、これ。ジャジャーン! ウェブページを作ってみたの。どう?」


 俺の前に突き出されたノートパソコンの画面。


 そこに燦然と輝くマシン子お手製のウェブページは、しかしお世辞にも『いいね!』を押せる代物ではなかった。

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