1章6話 石トモ
「
「うん。だからね、私と石友にならない?」
河原に座りながらマシン子と話していたら、何故かそんな流れになってしまった。敬称はナシという事で、お互いの名前は呼び捨てにしている。
彼女は天然石を使ってアクセサリーを作る職人で、素材は買わないのが一応のポリシーらしい。ただポリシーといっても絶対的なものではなく、探したほうが原材料を買うより安いからだと、あっけらかんに教えてくれた。
石を採取する作業は常に孤独が付きまとい、たまに大声で叫びたい衝動に駆られる。そんな時に誰かがいたら、それだけで安心できるものだ。
教えてもらった彼女の年は二十一歳で俺より一歳年上なだけだし、人懐っこいし、何より喋っていて嫌な感じがしない。それに唯一無二の価値ある名前は一度聴いたら忘れられないし、綺麗だし、綺麗だし、断る理由が見当たらない。
「了解だ。じゃあ石を採取に行く時は連絡するよ」
「ありがとう! 同行者がいるだけで気が楽だわ」
「それはそうとアクセサリー職人って儲かるの?」
俺はマシン子とライン交換をしたついでに、少し突っ込んだ事を聞いてみた。
先程少しだけ見ていたが、マシン子の採取速度と採取量ではどう考えても一回の採取で沢山のアクセサリーを作れるとは思えない。何か俺の知らない未知の機械で数を増やすのならともかく。
脳裏にマシンがチラつく。
それに女性が一人で山奥に入ってまでやる価値のある仕事なのかどうか。
そんな疑問が頭に回りだしたので、悶々とするよりはと直球で聞いてみたのだ。
「勿論儲かるわよ。特にアグニタイトはサンスクリット語で火神の石って意味があってパワーストーンとして人気なの。この赤っぽく見えるのが中に含まれているヘマタイトっていう酸化鉱物で、ヘマタイトが多い程アグニタイトは赤く輝くのよ。それに価値も高くなるしね。義経もアクセサリー作ってみる?」
「遠慮しとく。工作とか苦手なんだ」
「こんなに採取が上手なのに、もったいないわね」
「天は二物を与えないのさ」
「プッ、何それ」
マシン子はさすが職人だけあって石の事を良くしっている。
マシンガンみたく説明し出した時は変なスイッチを入れてしまったと危ぶんだが。
マシンガンのマシン子。……語呂が悪いので忘れよう。
俺達はそれから暫く喋り続け、気がついた時には山が曇り始めたので急いで帰路についた。山道に停めてあった彼女の車は未来カー的な物ではなく普通の軽自動車だった。
マシンから離れろ、俺の思考。
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