第24話

「...って言う話。その竜とは僕が人間になってから会ってないよ。おしまい」


「スノウさんは反対しなかったんですか!?」


「そのドラゴンさんは寂しかったけれどラークさんのために我慢したんですよ...わかるなぁ...」


僕は戦闘に負けた。しかも本気を出して反則負けという終わり方だったから満足はしていないけれど負けは負け。敗者の罰ゲームとして、『何でもいうことを聞く』という条件を飲んだら、昔話をする羽目になった。


 アリアとレイカはそれぞれ妄想に更け、黒霧さんは外の風を浴びてくると言ってから帰ってこない。


「いや、スノウには何も言わずに来た。」


「え、もしかして泣かせない為にこっそり...ラークさんも人の気持ちわかるんじゃないんですか!最初は盗賊を皆殺しにしてたり...」


「言うの忘れてた。だから何も伝わってないと思う。」


「...サイテー」


「ラークさん、ちょっとお話しましょう。いいですか?夫婦というのはですね....」


こういう羽目になってます。神と人間の感覚は違うのに。


皆で語り合っているうちに夜も更けて来た。

黒霧さんはまだ帰ってこないけれど、アリアとレイカは酔いつぶれてもう寝てしまった。

僕はアルネットと余ったおかずをつまみながらぼーっとしていたんだけれど突然アルネットが切り出した。


「ラーク、さっきの戦闘で最後何をしようとしたんだい。」


さっきの戦闘、というのは黒霧さんの

【禁止】《ストップ》を受けて本気を出したときの事を言っているのかな。


「天変地異。」


「そうじゃない、それをする事でどうなるんさ。」


「僕がやろうとしたのは【水の踊り】。ノアの箱船って昔話知ってる?それに似た事だよ。流石にあれは防げないと思ったから」


アルネットが止めてなければ確実に僕が勝てたのに。


「...あの島だけじゃなくて世界に影響が出るんじゃないか?」


「だろうね、でも君がいるからレイカとアリアは守れると思った」


途端にアルネットが叫ぶ、もの凄く怒った剣幕で、違う。と



「他の大陸の人間たちのことは考えて無いのかい!シルバー試験のレイカの戦闘でもそうだ。お前ならレイカに技を発動させないように、すぐに倒すことなんて簡単だろう」


それはおかしい、あれはきちんとした決闘だ。する側も見る側も命をかけるのは当然。


「そうだね、でも何でそんなことをしなきゃいけないの?力の無駄じゃないか、アリアのように周りの事ばかり考えている純粋無垢なやつばかりじゃないのに助ける必要ってあるかな。」


「神とは違って人間の命は軽くない」


「この世界の基準は僕の父親だ。人間たちのようなぽっと出の奴らが決める事じゃない。」


それに、命は平等ではない。ゴミのような魂のやつらがいくら死んでもアリアには匹敵しない。


「じゃあお前の言う神様基準の価値観で、戦闘を続けたとして、黒霧が死んだらどうしてたんだ。」


肉体入れ物が無事なら神の力を使うまでもない。すぐに蘇生出来る。」


「それは間違っていると言ってるんだよ。」


意味がわからない、何も間違っていないだろう、人間がもろいのは知ってるんだ、蘇生するという行為はむしろ善意だ。


疲れたよ、もう話す事は無くなった。僕は何も返事をせずに黙ってご飯を食べ続ける。

黒霧さんも帰ってこない、でも彼女は強いから襲われても大丈夫だろう。


「...はぁ、もういいよ。頑固な神もいたもんだね。ラーク、黒霧はギルドの屋根の上に居るみたいだ。行ってきな」


「なんで?彼女は強いから大丈」


「話しても埒があかんわ。いいから行って来い!」


突然部屋中が光って、僕は宿屋の外に出された。魔法まで使ってまで行って来いって...

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