第19話
「ねえラークさん、さっきのどうやって防いだんですか?」
「ん~?ああ、爆発の?周りの水を集めてこう...バリアみたいにね」
「流石ですね...そういえばアルネットさんが応援に来ていましたよ。勝って凄く喜んでました!」
だろうね、大儲け出来たんだろうし。
僕はゴールド、アリアはシルバーの称号を得て無事ギルドまで帰ってこれた。
試験管の人はえらそうな人に呼び出されて凄く怒られていたけれど、大丈夫かな。
「ラークさんも無事ゴールドになれましたし、次はどうしましょうか。」
「アルネットの宿屋を何とかしてあげたい。」
僕たちの今の目的はそれだけだ、寝床は確保出来たがそこが取り壊されるんじゃ意味がない。立地が良すぎるせいなのか貴族に目を付けられ取り壊されるそうだ。
「といっても...相手が貴族ならどうしようも...」
「だから、殺そうよ。それか洗脳して言うこと聞かせれば早いよ」
「それじゃ魔王となんら代わりありませんよ!...はぁ、わかりました。私がその役割を担います。ラークさんに任せると殺しちゃいそうですし。」
「じゃあお任せします、頼みました。」
「はーい...ラークさんはその間、お金を稼いだり情報を集めてきてくださいね?」
「任せてください!」
僕としてもアルネットの最後の夢が壊れるのは見たくない。でも僕には何も思い付かないや。お腹すいたな、そろそろ戻ろう。
と思ったけれど、後ろから凄い勢いで走ってくる気配が...
「ちょ....ちょっと待って、ラーク君!」
「はい、呼びましたか?ああ、さっきの試験官さん。お疲れ様でした!」
試験中とは違い、髪はボサボサ、目は少し赤く息切れが激しい。それに顔が死んでいる。
色々と後始末をしてきたのだろう。大変ですね、自分のせいでしょうけれど。
「本当にお疲れ様だったわよ!ちょっとついてきて!」
「えぇ...お腹すいたのでもう帰ります、明日また来ますから。」
「ご飯くらいおごってあげるわよ、好きなもの買ったげるからちょっと来て!」
試験官さんが凄く魅力的に見えて仕方がない。日は落ち掛けていて、外も少し涼しくなっているがまだ明るい、時間もあるぞ。
「待って待って!ラークさん!そんな誘拐紛いの誘いに乗らないでくださいよ!怪しすぎるでしょう!」
「大丈夫、僕は一人でも強いからアリアは先に帰ってアルネットの様子を...」
「ご飯食べたいだけでしょう!えー...レイカさんでしたっけ、アナタも何なんですか家の子に!」
「家の子!?いやそうじゃなく...別に怪しいことはしないから大丈夫よ。ギルド長が呼んでるの!アナタ達呼ばれていたの覚えてないの?」
「あっ...ラークさん私先に帰ってますね~、遅くならないうちに帰ってきてくださいね?じゃあまた~」
アリアは返事を待たないうちに帰ってしまった。ギルド長?呼び出される覚えが全くないぞ...ホワイトまで上げてくれるのかも。
「ギルド長と3人で食べに行くの?」
「バーカ!やっぱりあんた凄い事言うわ、魔力も桁違いだわで意味わかんないわよ。内容は知らないけど呼んでるの!...私はもうこっぴどく怒られたから会いたくない」
試験官が凄く疲れた表情をしていたので、一応回復魔法をかけておいた。じゃあ凄い剣幕で睨まれたから足りないのかと思って最上位の回復をかけたら全力で殴られた...痛い。
試験官...じゃなくてレイカ?は僕の右手を握り引っ張るようにギルドの階段を上っていく...階段?外から見たときは2階なんて無かったような...見間違いかな。しばらくして大きな赤色の扉の前に出る。ハッキリと感知出来るほどの防御魔法、いや結界と呼んでもいいくらいの強度で魔法を施している。今のアルネットでもここまでの魔法は施せないだろう。
急にレイカの雰囲気が変わる。
右手で握り拳を作り、胸の前に持ってくる。
イヤだなぁと顔が体現しているのがわかるくらい渋い表情をしてノックをためらっているのだろう、僕が代わりにあけてあげよう。
「こんばんはー!」
「あ、あんたノックもせずに!申し訳ありません」
まるで色のない世界。天界にも同じような所があり既視感を覚えるほどその場所と似ていること、そして、中心の豪勢な黒のテーブルに座っているのは、真っ白な髪に透き通るクリアな目、華奢な体持った少女であった。
ああ、なんて懐かしい。
―――僕は”それ”を知っている
「大丈夫、ありがとう。レイカ、よこにおいで。」
「あ...私はお邪魔では...」
「ううん、大丈夫。」
彼女の見た目には全く覚えはない。でも
―――あの魔力を見間違える訳はないだろう?
「久しぶりだね、スノウドラゴン」
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