第17話

「私と?あなた正気?」


会場がどよめく。既にリタイアして休憩していた人間、クリアして説明待ちをしている6人は茶々を入れてくるし、さらには、アリアまで...


「お前みたいな子供が白のレイカに勝てるわけねーだろ。シルバーになったからって調子に乗るなよ。」


あざ笑うかのように発言する彼に乗る人間たち。会場が一団となって僕を蔑む。

そんなに可笑しいことは言っていない。彼女の力量はわからないけれど...


「ラークさんダメですよ!」


「大丈夫。」


「大丈夫じゃないです。命はそんなに軽いものじゃありません!」


「うまくやる。」


「子供みたいに意地っ張りで...『絶対殺しちゃいけませんからね。』」


アリアが最後の注意事項を僕に叩き込んで来た瞬間に、笑い声が止まった。


「私を殺す?面白い事を言いますね。」


彼女は笑顔で僕に近付いてくる。

足音をわざとらしく立てながら、威圧的に笑顔でだ。

ちなみに、会場の魔素は元に戻っている。けれど、さっき以上の、いや比べ物にならないくらいの魔力が彼女から漏れている、僕でもはっきりとわかるレベルだ。


彼女の顔が僕の顔に当たるんじゃないかというくらい近づいて、一言、ハッキリとそう言った。」


「受けましょう。挑発されたままでは終われませんからね。今、しましょう。」


マジかよという声が上がる中。お金をかけて楽しむもの。危険だと叫ぶ人間と野次馬を集めに行った人間。でもそんなのは気にならない。これは僕のイライラを収めるための”イベント”でしかない。


「うん、いいよ。今どうやって勝敗を決める?」


「ラークさん...でしたっけ?アナタが決めていいですよ、挑戦者の特権です。私はどんな勝負も受けましょう。」


決めていいって言ってくれたけれど、僕も何でもいいんだよね。

神域で親友と喧嘩した時に風の神に言われた勝負で決めようかな。


「じゃあ、『相手をその場から動かしたら勝ち』ってルールにしよっか。」


「いいですよ、でも曖昧過ぎます、もう少し詳しく決めましょう。

魔法にはしゃがむ動作も必要なものがあります。なので、お互いに10m離れて、その位置から3歩以上動いたら負けということで。」


「難しい...けれど大丈夫。わかった」


彼女はホワイトという立場がある。

位の高い神が天使に負けれないのと同じく彼女には彼女の何かがあるのだろう。


僕達は距離を置く。一歩、二歩と離れていき大体10m程の距離まで離れた。

もちろん物理攻撃は届くはずもない、遠投や魔法での勝負だ。うまく吸収するか三歩以内に避けないと負け。


いつの間にか観衆は増えており、初期の参加者よりも多いかもしれない。食べ物を売っている物。賭事をしている物などがいて、アリアも真っ青な顔で心配そうに見つめているがソーセージを食べている。

...?よく見ると見覚えのある人...も...


「やっちまえー!そんなクソガキなんて相手にならんよー!あんたに全財産かけてんだからね!」


アルネットが騒動の中心で叫んでいたよ。

しかも周りの精霊達まではしゃいでいる...アナタ達が賭事の主犯なのね。

僕に賭けてるみたいだから頑張らないと。

まわりの空気に流され少しだけ冷静になってきた。イライラは収まっていないけれどアルネットが来ている以上カッコいいところを見せたい。


「周りなんて気にしなくていいです。準備は出来ましたか?」


少し離れた所に彼女が立っている。ここでもハッキリとわかるくらい魔力が満ち溢れている。けれど僕どころか、アリアの足元にも及ばないです。


「準備できたよ、そろそろ」


「じゃあそれでは」


「「はじめましょう」」

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