第15話
受付の人としばらくの別れを告げ、
僕達は濁流のような人混みに流されて、押し出させるかのように扉に入った。
今更だけれど、どんな試験はどういうものなのか何も聞いてないし知らなかった僕達は、何の準備もしていない。
むしろ『過去旅』のせいでかなり魔力が減っている状態で、万全な準備をしているとは到底言えなかった。
「ラークさん、これから何をするんでしょう?」
僕達は、扉の向こうに出たのはいいけど、試験官も居ないままずっと立ち止まっていた。
何もない無機質な大部屋に、大人数が集う。
みんなザワザワしているが何かが始まる前兆も無く時間が過ぎていく。
「わかんないけれど、そのうち何か始まるんじゃない?」
だけど、周りの人たちがイライラしているのが態度に現れている。もう数十分もほったらかしにされているから仕方がないかもしれない。
そうしていると、どこからか、透き通る声が聞こえた。やっと試験官の登場みたい。
「大変遅くなりました!試験官のレイカと言います!本当にすみません!仕事が長引いてしまいまして...」
大部屋正面に現れたのは青色の髪と碧色の瞳が輝き光る、ちょっと小さな女の子だった。
「おい、チビ。仕事を理由に何十分も待たせてんじゃねーよ。」
「君、迷い込んじゃったのかな?早くお家に帰ろうね」
遅れて現れた周りから罵倒される試験官の少女はうつむき、続けて謝罪をする。
「そうですよね、すみません...草原の異常の検査が大変で...」
今、彼女の口から身近な事柄が聞こえたけれど聞き間違いだろうか。と思ったけれどアリアが大声でフォローを入れる。
「し...仕事だから仕方が無いでしょう!草原が全部薬草になったなんて大事ですし!皆さん許してあげましょう!」
試験官に早く試験を始めるように進めている。それに答えるかのように試験官は笑顔を見せた。
「薬草になったなんて私言いましたっけ...まあでも遅くなりましたが試験を始めます!」
ちょっと申し訳なくなってきたので後で草原を元に戻します。
「改めまして、試験官のレイカです。小さいですが皆さんと同じくらいの年齢なのでバカにしないように!」
「ラークさん、あの子私知ってます!」
「僕は知らないなぁ。」
「ラークさんは興味がない人以外は全員覚えないでしょう!ほら、ギルドにチラシが張ってた人ですよ!”白のレイカ”!」
「早速ですね、試験を始めます。と言ってももう実は”始まっているんです”」
白?...黒色しか興味がないから見てなかった。でも白も強いのかな。アルネットよりも弱いけどな...アルネットが強すぎる...?
「この部屋に濃度の高い魔力を流し込んでいます。魔界の再現ですね、10分この場に居続けて耐えられたら合格、たったそれだけです。リタイアは向こうのドアからどうぞ。」
そうしているとさっきヤジを飛ばしていた男が食いかかる。
「そんな簡単な試験でシルバーになれんのかよ。ギルドも終わりだな」
みんな笑っている。でも、多分この笑ってる人達みんな倒れちゃうんだろうな。
「でもただ立っているだけじゃ"つまらない人"も数人はいると思うので、その人たちには特別な試験をしてあげますね」
と言った途端に
―――いきなり一人が倒れた。
「あらら。その必要も無かったですかね。」
ほんの少しだけ魔力が濃くなっているのか、周りの人達は苦痛の表情をしながら汗をかいてきている。
「まだ2分も立っていませんが、今からどんどん濃度が上がって行きます。今で魔界の1/10くらいですかね。さあ頑張りましょう!」
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