第14話
「忘れてた...で...でもまだ朝の9時です!間に合いますよね!」
「受付の人は9時までには到着しといてね。って言ってたよ」
「は...あはは...終わった、初日から草原を薬草畑にしたあげく2日目は約束を忘れるなんてギルドから見放されたも当然...」
試験を忘れてたのは別にいいんだけど、約束をした以上守らなきゃいけないよね、それにアリアが落ち込んでるし...何とかしてあげたいけれど...
「まだ10分"しか"過ぎてないから大丈夫だよ!」
「10分"も"過ぎてるんです!神様の世界は知りませんけれど人間の世界は遅刻は許されませんから!」
わかった。じゃあ奥の手だ。
「ちょっとだけ本気出す。」
「ちょ...ちょっと待って!なにをする気ですかラークさん。草原の時も『ちょっとだけ本気出すから見てて』って言ってああなったじゃないですか!」
いやあれは薬草がたくさん欲しいって言うから木の精霊にお願いしただけで...僕は悪くない...こともない。
「今回は大丈夫、僕の手を握って目瞑ってて。」
不安そうな顔をしながら僕を信じてアリアは手を繋いでくれる。今回は大丈夫。きっと。たぶん...
「おばちゃん、ここで見たことは秘密に。」
「もう年だからなにみてもすぐに忘れちまうからね、しかたない。」
僕の専門分野ではないけれど、出来ない事もないだろう、使うのは初めてだな。
「『過去旅』《リウォーク》」
ほんの、ほんの少しだけ僕たちは過去に遊びに行く。
「ラークさん?何かしたんですか?特に変化は見当たりませんが...」
「お嬢ちゃん、外の柱時計をみてごらん。こんなの私も初めての体験だよ、人間業じゃないわね」
アルネットの言うとおり、この部屋を軸に世界の時間を30分だけ戻した。外はこの部屋より30分前の世界ってことになる。
「上手く行って良かった~初めて使うから。」
「...ちなみに上手く行かなかったらどうなっていたんですか。」
「大したことじゃないよ。」
アリアが疑い深そうに目を凝らせて僕を見てくるけど、そんな目で見ないで欲しい。大した事じゃない。何年も前に飛んでしまうか、この世界から居なくなるかのどっちかだし。
---
ギルド本部に付いた僕達をまず迎えたのは受付の人でも試験員でも無く、同じく試験に参加する人達だった。
「今回はちびっ子も参加するのか。受付はあっちだぜ。」
「ありがとう。」
優しいお兄さんが教えてくれ、僕たちはそっちに向かって歩いていく。
全員合同の試験なのか、どこを見てもみんなムキムキだったり魔力を漂わせていたり、いかにも戦いますっ。って感じの雰囲気だ。
「あら、早かったわね。といっても他の参加者はほとんど来てもう準備してるけどね。」
いつもの受付の人から僕たちに話しかけてくれた、たぶんこの参加者達の中で一番筋肉が多いのがアナタだよ。そんな事を想像しているとアリアが受付の人に質問を投げかけた。
「この人たちみんな出るんですか?」
「そうよー、今月の参加者は80名、他の支店にもいる人達を合わせたらもっともっといるわ、みんなブロンズだけれど猛者達よ。中には実質シルバー以上の実力者もいる
わね。」
細かく受付の人が説明してくれてるけど。正直、どうでもいい。受けて受かればそれでいい。僕の最終目標はシルバーなんかじゃないから。
「そういえばあんたたち、武器は?忘れてきたの?急いで取りに帰らないともうすぐ始まるわよ」
「武器はないです。このまま参加します」
「...ほんとに変わり者ね。草原をあんなにしたあんた達なら今更なにを言われても驚かないわよ。」
ほんとかな、僕が神様ってことをバラしても驚かないのかな。試験が終わったら試してみよう!
「その件は本当に...」
「いいわよ、私もただの冗談だと思って流したけれど、後から報告を聞いたらマジだってね。自分の目で見に行ったわ」
「...そろそろ試験が始まるみたい、あの扉が開くからそこから出発して。」
受付の人の言うとおり、大きな音を立てながら古びた扉が開き始める。周辺は殺気立っていて我こそはと前へ前へ出たがる人でいっぱいだ。
「じゃあ行ってきます。ありがとうございました。またあとで」
「がんばってね、終わったらギルドマスターがあんた達を呼び出してるから。至急来いってさ。いってらっしゃい。」
「えっ」
これ以上ない笑顔で不穏な言葉を残して僕らを見送ってくれました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます