第7話

 僕たちは今、馬車に揺られて王都に向かっている。

 優しく日は照っており、ほどほどに暖かい日差しの中で僕は荷台でゴロゴロしていた。慣れればこのゴツゴツした感触も悪くない。たぶん武器とか宝石とか入ってるんだろうなぁ。


 女の子達は馬車の中でお喋りをしてる。アリアは何をしてるかというと、手綱を握って運転をしてる。生前に馬の扱いは心得てるみたいで、が手綱を握ってるのだ。


 でも今の形状は人型になっている。スライムというのは自由に体のサイズを変化させる『変化』とレベルが上がれば、見た目から匂い、声帯までを模倣する『擬態』という能力を持つ。

 今のアリアのレベルはわからないけれど、僕が作ったスライムだから擬態くらいなら出来るはずだ。


「ラークさーん、もうすぐ王都につきますよー。支度してくださいねー」


「はーい」


 そうこうしてるうちにもう王都に着くみたいだ。

 まず王都についたら美味しいものが食べたいな。


 僕はそう思いながら、アリアに支度しろと言われた事を忘れて眠りについてしまった。


 ---


「...きてください!」


 うるさいなあ、誰が起こしてるんだ。


「起きてください!いつまで寝てるんですか!もう着きましたよ!」


 ついた?...まだ1年も寝てないのに....ついた...王都か!


「おはよっ」


「おはよじゃありません、王都について少女達がお礼とお別れの挨拶をしたいと言っていたのにあなたが起きないからあきらめてもう行ってしまいましたよ。」


「なるほど」


 申し訳ないことをしてしまった、今度あったらその時に言ってもらおう。


 …そして、いつの間にかアリアは髪が長くなっており、金髪で目の色が蒼色になっている。背も僕よりも高く、スライムの時とは違って見下ろされてるではないか。


「それって、生前の姿?」


「はい、なれるかなーと思って試してみたらなれました」


「似合ってるよ。僕はスライムの姿も好きだけど」


「...本当に思ってます?それにスライムの姿で街中を歩くと3秒で殺されますよ。」


 アリアのスライムなら王都くらい飲み込めると思うんだけど...。


「ラークさんはこれからどうするんですか?私は目的も特にないのでついていきますよ。」


「これから....とりあえず魔物の肉よりも美味しいものを食べたい。」


「...深くは聞きませんが、わかりました。じゃあ料理屋にでも行きましょうか。王都ですからね、生前の時とだいぶ変わっていますがそれでも色々な食べ物があるでしょう。失礼ながら予算のほどは?」


 予算?お金の事かな。僕が持ってる訳ないじゃないか。生まれたの7日前だぞ。

 ...もしかしてお金がないとごはんが食べれないのかな。


 困った。


「それでどうやってごはんを食べようとしてたんですか....とりあえずお金を稼ぎましょう。」


 この世界は色々なお仕事がある。鍛冶や裁縫、冒険者や、漁師。もっと色々あるみたいだけれど、僕みたいな身分を表せないものがなれるのは冒険者という仕事くらいしかないみたいだ。


 危険な地域から薬草や素材をとってきたり、魔物を討伐したりする仕事みたい。

 色々な支店が各地にあるみたいだけれど、王都には一番大きな本店があるらしい。


 そして、今僕たちがなろうとしているものと今居てる場所、それは冒険者受付所のギルド本部である。


「いらっしゃいませ、冒険者登録をご希望でしょうか?」


「はい、よろしくお願いします。2名で、私がアリアで彼がラークです。」


 そう、今僕はアリアの横でぼーっとしている。

 彼女が「あなたに任せるとどうなるかわからない」と言って止められたのだ。


「…?失礼ですが、弟様でしょうか?未成年者の登録は可能ですが本人の意思がないと認められません」


 弟と言われた。弟じゃないのに...僕は特になにも言わず、一言だけ「冒険者になります」とだけ返答した。アリアが訂正してくれるかなと思ったけれどニコニコ笑顔で満足そうな表情だ。


「はいっ!"弟"のラークは"姉"の私と一緒に冒険者登録をお願いしますっ」


「畏まりました。ではこちらの書類に名前などの記載を...」


 よくわからないけれど紙を渡された。名前を書けばいいみたいだけれど、真名は嫌だからラークだけにしておこう。他の書く項目はよくわからないので適当に書いておいた!


「それでは最後にステータスの登録を致します。この魔道具に手を添えて魔力を流してもらうと、自身の強さが表示され、それがカードとして渡されます。身分証にもなりますので無くさないように。ではどちらからでもどうぞ」


手を添えて魔力を流す...スライムでも大丈夫なのかな。

案の定、アリアも同じことを考えていたみたいだった。


「ラークさん...私大丈夫でしょうか。正体ばれて即討伐とか...」


「うーん、微妙。だめだったら僕が何とかしてあげるよ。殺される前になんとかしよう!」


「殺られる前に殺るとかはやめてくださいね...じゃあ...」


そう言いながらアリアは丸の型をした道具の上に手を添える。

光輝を放ちながら、粒子のようなものが飛び出してきて、アリアは少し驚いていたみたいだ。害は無さそうなので僕も黙って見守ることにする。


しばらくすると道具から手のひらサイズの茶色いカードが飛び出して来た。

それを道具から抜き取り、受付の女性の人は、内容を読み上げようとするが


「えー、アリアさんのステータスは...えっ!!」


「えっ!」


アリアもつられて驚きの声を上げる。そういうところがかわいい。


「知能や筋力は平均ですが...魔力が150...宮廷魔術師レベルですよ。素晴らしいです。これなら今すぐにでも魔術協会からスカウトされます、アポを取っておきますか?」


「え...そんなに凄いんだ...いえ、協会は遠慮しておきます。予定がありますので。」


「わかりました...協会へはいつでも連絡を取れますので、気が変わったらお越しください。」


凄く難しい話をしている...お腹がすいてきた。

ぼーっとしていたらいつの間にか僕の番になっていた。





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