第5話

「え...どういう...もしかしてアナタって声の」


「うんっ、あの時の声は僕だよ、君の事が気になってたから呼んじゃった。」


彼女はすごく驚いている。その姿に、この現状に、この僕に。


そんな僕は自分が抑えられない。久しぶりに彼女に会えた。救えたわけではないけれど無力な僕を卒業してキミに会えたことに喜びを感じるよ。


「ねえ」


話を切り出したのは彼女だった。なんだろう。


「なんで私、こんな姿になって生き返っているの?それにアナタは何物?」


「そういえば僕の自己紹介がまだだった、ごめんね。」


うっかりしてた、そう僕は。


「僕の名前はラーク、五大元素の水を司る水神のラーク・ウォーターだよ。よろしくね」


「そう...ですか、このスライムの姿になっているのもアナタの力なんですね」


顔が虚ろで少し悲しそうに問い掛けてくる彼女はどうしたら笑ってくれるだろう、擬似的に生き返えらせたのが嫌だったのかな。僕は想った通りに問い掛ける、ごめんね肉体は消えてしまったから"それ"しかなくて。


「違うんです...ごめんなさい、気持ちの整理がつかなくて。でも、私が死ぬときに苦しまないようにしてくれたのもアナタなんですね。」


体はぷるぷるしたスライムだけれど彼女はそこで微笑んでくれていた。


「僕は君とずっと話がしたいと思ってた。だから自分勝手だけど魂を呼んだ。ごめんね。」


「いえ、不満なんてありません。どんな姿でも生き返らせてくれたのなら」


よかった、嫌われてない。

周囲の人間達や、手綱の彼が何か喋っているけれど、”どうでもいい”から何も聞こえない。君たちの事はもういらない。正直、王都なんてもうどうでもいい、もうちょっとお話したい。


「ねえ、君の名前を教えて。僕だって真名を答えたんだ。」


神にとっての真名は信用をしている証拠。僕の名を知るという事は半身をともにする証拠でもある。人間はそうではないのは知っているけれど


「私は...アリア。生前の名ですが、アリアと言います。」


「えへへ、これからよろしくね」


「これから?...ふふっ、私は共にするとは言ってませんよ?」


「ええ....」


アリア。いい名前だ。でもアリアはいじわるだった。これからが楽しみだ。

じゃあとりあえず眠ろうかな。


「ねえ、私たちはどうなるのよ!早くその力でこいつを殺してくれない?」


そういえば忘れてた、どうしようか。アリアに聞こうと思ってたんだった。

ねえアリア、どうしたらいい?


「...奴隷商人さんが悪いと思います...でも、彼も仕事で」


「そっかわかった」


アリアが言うならそうなんだろう。



僕は何も疑わず



―――後ろに控えてた水の槍で彼の心臓を貫いた。

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