第二盗 惑星【クリスタ】



「【永凍の花】?……何それ?」

「うえぇ!!?頭が言ったんスッよ!?氷の花を探せって!」

「ん?言ったっか?」


 団員少女の努力虚しく、適当な頭ゼノは首を傾けぼやーとしている。

 そりゃあ、ないスッよ……、と言いたげな項垂れた哀れな団員に救いの手ならぬヴァレンの声があがる。


「確かに言ってたぞ。昔見た氷で出来た花が見たいから探せと」

「うん?そうなの?……ヴァレちゃんが言うならそうなんだろうね!うん!御苦労様、ビーフ」

「はい……って!ビーフって何スッか!?ウチ、リーフですよ!?美味しくないスッよ!?」


 ビーフならぬ、リーフは覚えてくださいと獣人特徴の尻尾を左右に激しく振りそう抗議する。それをゼノはあーハイハイと、さもどうでもよさそうな返事をし椅子を引く。

 椅子に座ったゼノだが、テーブルの上には料理が並べられていただろう皿を残し何もない。誰がどう見ても昼飯終了である。


 ガンとテーブルに頭を打ち付けるゼノ。


 彼は一日や二日、はたまた一ヶ月ぐらい飲まず食わずでも平気な化け物じみた体をしているが食事は楽しみなのだ。数少ない趣味と言ってもいい。食べてみたい食べ物があれば独断と我が儘で星を跨ぐ、それぐらいには食べることが好きだ。

 ガンガンと頭を駄々っ子の様にぶつける。そんな彼の元へ、ほのかな肉の焼けたいい匂いがする。


 ゼノが振り返ればお盆を手に持つ、料理長ヴァレン


「次からは、早く起きろ」

「おぉ!!流石私のヴァレちゃん!愛しているよ!」

「気色悪い事を言うな」


 ゼノの介抱ハグを回避し、お盆をテーブルの上に置く。少し残念そうに、椅子に再度座るゼノ。


 だが、まぁいいかとナイフとホークで肉を切り口に運ぶ。滴る肉のエキスに、焼けた肉の香りが食欲を沸き立てる。それを歯に当て噛めば、あふれでる肉汁が口の中を支配する。

 パクパクと次々に口に運び、ゼノはふやぁと頬が緩む。そして、ヴァレンが置いた酒の入ったグラスを傾け一気に飲み干す。


「はーぁ、美味しかったー……。それで?永凍の花が何だっけ?」


 口を拭きながら、狼人族のリーフを見る。

 

「はっはい!えーと、ですね……永凍の花っていう氷で出来た花がクリスタって言う星にあるようスッ!」


 あたふたしながら鞄から資料を取りだし出し読み上げる。


 クリスタ惑星は、気候が基本的に冬でまれに春がある、綺麗な雪景色を見に訪れる客が多くいる観光地として有名な星だ。都市部には障壁が張られ冷たい吹雪から人々を守る作りになっている。 

 そこで住む人々には水を生み出す力があり、厳しい気候ながらも比較的豊かな惑星である。


 そして、【永凍の花】とはその星の王都と言われる中心都市にあるとされる秘宝のことだ。この永凍の花には不思議な力があるとされ、侵略してきた異星人の襲来を押し退けたという言い伝えが残っている。

 その為、現在は王宮にその花が在るのではないかと噂されている。


「へー……、そうなんだ」

「で、どうするんだ?」 

「うん、とにかくその星に行こっか」


 ジュース買いに行こっかと、言うぐらいの軽いノリでゼノはそう言った。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る