盗賊団【白鯨】

紫蘇テン

 盗賊団と永凍の花 

第一盗 盗賊団【白鯨】



 我らは盗賊団。気に入らねぇ事は押し倒し我が道を行く盗賊集団だ。そしてここは盗賊の頭【ゼノ=ブラッディー】がだらしなく眠る寝室。


『コンコン』


 気持ちよく寝るゼノの部屋に無粋なノック音が響く。だが、図太い神経の彼は全く起きず枕に顔を埋めている。すると、ノック音はしだいに大きくなり、ガンガンと扉が叩かれる。しかし、これでも起きないのがゼノである。

 苛立ちが増すのが手にとって分かるぐらい鳴り響く。もう、止めてくれぇー!!と扉が声を発しているようにギシギシと悲痛な音がノックと同じく聞こえる。


「んっ……」


 これには流石のゼノも音に僅かに目を開ける。だがしかし、それでも頑なに彼は起きようとせず。鬱陶しそうに布団をより深く頭から被り再び寝る体勢に入るが、バッキと嫌な音がすると同時に扉が無惨にも散る。

 木片がパラパラと地面に落ち、埃が舞った影の中に夜のような紫色の髪を靡かせ立つ男は我らが盗賊団の右腕【ヴァレン=ブラッディー】。


 普段は無表情の顔が目が細まり、布団にくるまる簑虫ゼノを金色の瞳で睨む。僅だが殺気が溢れるその姿を見れば、子供のみならず団員達も全力で逃げ出すだろう気迫だ。

 

「おい、起きろ」


 怒気を含んだ低い声でヴァレンはゼノを呼び掛ける。もぞもぞと布団から深緑色の髪が出てき、眠気眼な紅色の瞳にヴァレンが映る。


「あぁ……ヴァレちゃんか。おはよー……そして、おやすみー……」

「寝るな!もう、昼だぞ」

「フッフフ……甘いな、ヴァレちゃん。私達は何だ?」

「はあ?……何って……盗賊?」

「そう!我らは盗賊だ!故に他人が決めたルールには従わない!故に、私は寝る!」


 デェデン!と後ろに効果音が出るぐらい高らかにゼノは吠えた。

 それを白けた目で、ヴァレンは見ながら冷たくいい放つ。


「……偉そうに言ってるが、今起きないと昼飯ないぞ」

「えっ?残しといてくれないの?」

「残ると本気で思うか?」


 ゼノが自分で言ったように我らは盗賊だ。男が多数を絞める盗賊団で昼飯が残る可能性など0に等しい。

 それを理解すると即座に布団を剥ぎ、寝間着を脱ぎ捨てる。棚から黒のシャツと黒のズボン、赤のスカーフに着替え、コートを羽織りブーツを履く。そのは速さは目を見張るものだ。


「お前……」

「うん?なんだい?早くいかないと、無くなっちゃうよ?」


 はぁとヴァレンは溜め息を吐きさっさと食堂に向かうゼノの後を追い綺麗に元に戻った扉を閉める。


 我ら、盗賊団の根城は宇宙を駆ける大型戦艦である。惜しげもなく金と素材と技術が使われたこの船は多少の損傷は自動で修繕される。ヴァレンがああも扉を気軽に蹴り飛ばせたのはそれを知っているからだ。

 進行中は船内で生活が可能な様に、厨房、食堂、風呂、寝床、娯楽場、食料庫、武器庫等などと施設が充実している。船両庫もあり、小型船や中型船を収納でいる場所もある。


 団員の数は千を超え、一般的な盗賊が百人いるかいないかに対せば大所帯だろう。故に我らは三大盗賊団に入る。

 圧倒的団員数と資金を誇る【翠芯すいしん】。女性が多数を絞め頭が異例の女である【月華げっか】。


 そして、人数は他の二大盗賊には負けるながらも、それを覆す武力を持つ、我ら【白鯨はくげい】。











「ゼノの頭ァ!【永凍の花】が見つかりました!!」


 ゼノとヴァレンが食堂の扉を開けた瞬間に聞こえたのは大声で喚く団員だった。







 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る